診療報酬改定、在宅医療体制の充実図れ


 2年に1度見直される公的保険による医療の公定価格(診療報酬)の2014年度改定案が答申された。

 今回は、入院施設のある医療機関で患者が回復し自宅に戻る割合が高ければ報酬で評価することなどを盛り込んだ。在宅医療の推進に弾みがつきそうだが、医療機関と家庭の連携、家庭の受け入れ体制の充実が急がれる。

「主治医機能」を評価

 中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関)の今回の答申では、まず病気やけがをして間もない重症患者を受け入れる急性期病床が、手厚い報酬で急増したことなどを反省し、同病床の要件を厳格化し削減を目指している。

 一方、急性期を過ぎ、在宅復帰に向けた医療を提供する「地域包括ケア病床」は、その役割を強化。在宅復帰率の底上げを図る。

 それを受けて中小病院や診療所の医師が、糖尿病など複数の慢性疾患を抱える患者を継続的に治療する「主治医機能」を新たに評価し、大病院の外来業務の負担を軽減。また在宅医療の充実に向けては、在宅患者の診療に当たる病院や診療所の要件を実績重視の内容とする。急病患者の対応などを担う有床診療所の報酬も増額――などとしている。

 政府は診療報酬の14年度改定率を全体で0・1%増とした。その中で、在宅医療推進に向けた報酬配分の工夫は一応認めるが、問題はその実効性だ。

 少子高齢化の中で在宅医療、介護が患者本人、家族らの普段の家庭生活の一環として位置付けられるよう、行政と医療機関にはそれなりのバックアップが求められる。

 例えば、在宅医療における人手が不十分なのにもかかわらず、病院の都合で返される患者が少なくない。逆に、患者本人が自宅で安らかな最期を迎えたいのに、在宅医療のシステムが整わず、入院を続けざるを得ない場合もある。

 同じ疾病でも患者の症状などによって対応が異なることもあるが、概して入院医療の必要性は医師の判断に負うところが大きい。

 患者や家族たちの要望にどう柔軟に応え、ベストの治療を行う体制を作ることができるか。充実した在宅医療のために、病院と家庭、家族との連携を密にすることが欠かせない。

 厚労省は今国会に医療・介護総合推進法案を提出し、都道府県が関係者と連携しながら、地域の実情に合った医療提供体制を整備する枠組みを設ける方針だ。答申にあった地元の「主治医機能」なども効率的に取り入れるべきだ。

医師と信頼関係必要

 住み慣れた家庭、地域で必要なサービスを受けられるよう、また地域の医療と介護のネットワークに頼れるよう、患者本人だけでなく、家族らは日頃から医師との間で信頼関係を結んでおくことが重要となる。

 医療費は現在、40兆円近くに上る。政府には医療費だけでなく社会保障費全体の抑制も「家族の絆」を重視した取り組みによってこそ解決できるという信念が必要だ。

(2月15日付社説)