緊急事態宣言解除 対策徹底し接種の加速を


 政府は新型コロナウイルス感染対策で、10都道府県に発令中の緊急事態宣言を沖縄を除き20日をもって解除する。東京、大阪など7都道府県は21日から宣言に準じた「まん延防止等重点措置」に移行する。気を緩めず感染対策を徹底し、ワクチンの接種をさらに加速させて、リバウンド(感染再拡大)を抑えていかなければならない。

インド型変異株が拡大

 新たな措置は7月11日まで。同23日開幕の東京五輪を念頭に置いている。新規感染者は減少しているが、五輪開催地の東京では下げ止まりの状況となっている。人出も増加傾向にあり、英国型の変異株に替わってインド型変異株も拡大している。

 菅義偉首相は「何よりも警戒すべきは、大きなリバウンドを起こさないことだ。大事なことは、一日も早く希望する人へのワクチン接種を進めて医療崩壊を起こさないことだ」と強調。状況悪化による宣言再発令も、「必要であれば行う」と述べた。

 重点措置に移行する7都道府県と、継続される千葉、埼玉、神奈川の3県では、飲食店に対する午後8時までの時短要請を続ける。感染対策を講じた場合、午後7時までの酒類提供を認めたが、知事の判断による自粛要請も認めた。

 これを受け、東京都と大阪府は午後7時までの酒類の提供を認めたが、政府の「1グループ4人まで」の条件より厳しい「2人まで」を条件とし、東京都はさらに滞在時間も90分までとした。重点措置対象地域でも感染状況は異なり、状況に応じ柔軟な対応が求められる。

 感染対策の鍵とされてきた飲食だが、同じくらい懸念されるのは人出の増加である。政府は人流の抑制策として、企業に出勤者の7割削減を求めてきた。しかし日本生産性本部の調査では、テレワーク実施率は4月で19・2%にとどまっている。感染を抑えるには、通勤者を減らすことが第一だ。企業はテレワークにもっと力を入れるべきだ。

 感染対策の切り札となるワクチン接種は、この1週間で1日平均100万回を超えるペースで増加している。菅首相は「全ての市町村で7月末までに希望する高齢者への2回接種が完了する見込みとの報告を受けている」と説明。また「すでに新規感染者に占める高齢者の割合が低下しているとの指摘もある」と述べ、ワクチン効果が徐々に表れているとの見方を示した。

 自衛隊による高齢者への大規模接種が弾みとなって、ワクチン接種が加速していることは明るい材料だ。接種の実施状況は、それぞれの自治体によっても大きな差があるが、政府は遅れる自治体への支援をさらに強化すべきだ。

 一方、新規感染者は若い人の占める割合が増えている。18歳以上65歳未満の人へのワクチン接種は、できるところからどんどん進める必要がある。職場や大学での接種の推進拡大も有効な方法である。

攻めの対策に投入を

 国民への要請という形の対策には一定の限界がある。ただ、ワクチン接種は多くの国民が望んでいる。政府が尽力すれば成果を期待できる。攻めの対策に知恵と力を投入する時だ。