ソチ五輪開幕、同性愛問題と結び付けるな
ソチ冬季五輪が開幕した。史上最多の87カ国・地域から集まった世界一流のアスリートたちが23日までの期間、雪や氷の舞台で、どんな感動のドラマを見せてくれるか、楽しみである。
欧米首脳が開会式欠席
特に、わが国は2020年夏季東京五輪を控えている。日本人選手によるメダルラッシュは東京五輪に向けた選手強化に大きな弾みとなろう。日本選手団が掲げるメダル10個超獲得の目標達成へ、「日の丸」を胸にした選手たちの活躍に期待したい。
一方、ソチ五輪をめぐっては懸念材料もある。一つはテロの脅威だ。ロシア政府は治安の確保に全力を挙げているが、「平和の祭典」が成功裏に終わることを祈りたい。
もう一つは、欧米諸国の中に五輪を同性愛者の権利拡大のプロパガンダの場として利用する動きがあることだ。五輪本来の意義を歪めてしまうことにつながり、極めて残念である。
7日夜行われた開会式には、安倍晋三首相をはじめ40カ国以上の首脳が出席した。一方、米国、英国、フランス、ドイツなど欧米主要国の首脳らが軒並み欠席した。ロシアが昨年6月、同性愛宣伝禁止法を制定したことに異議を唱えることが主な理由と言われている。
だが、同性愛問題は、宗教的な価値観が絡むだけに、国によって考え方が大きく違う。世界を一つにする目的で開催される五輪の場に、この問題を持ち込むことは、国と国との溝を逆に深める危険がある。
また、オリンピック憲章は「オリンピズムは人生哲学であり、肉体と意志と知性の資質を高めて融合させた、均衡のとれた総体としての人間を目指す」と、「オリンピズムの根本原則」の最初に謳っている。一部のリベラルなメディアの中には、同性愛問題を考えることは五輪の理念に合致すると見る向きもあるが、むしろ逆であろう。
欧米諸国首脳の開会式欠席が五輪の理念と相容れないものであることは、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が開会式のあいさつの中で「五輪が持つ友好や寛容、平和のメッセージを尊重し、選手の背後に隠れることなく、平和的で直接的な対話で意見の違いを示すべきだ」と、欠席した首脳らに苦言を呈したことでも分かる。
一方、菅義偉官房長官は「わが国としてはロシアの人権状況を注視しているが、人権状況とソチ五輪を結び付けて考えてはいない」として、欧米諸国と一線を画す姿勢を示しているが、これが賢明な対応である。
欧米諸国では、同性愛を人権問題として捉える傾向が強まっている。しかし、オバマ米大統領の開会式欠席は行き過ぎであり、人権への配慮というよりも国内有権者向けのパフォーマンスと見た方がいい。
プロパガンダに警戒を
オバマ大統領は同性愛者の権利拡大を公約にしてホワイトハウス入りしている。11月の中間選挙に向け、有力な勢力となっている同性愛支持者への配慮は不可欠となっているのだ。東京五輪を控えたわが国でも、平和の祭典を同性愛に関するプロパガンダに利用しようとする動きを警戒する必要がある。
(2月9日付社説)