東京五輪 開催し世界に希望の灯を
東京五輪・パラリンピックの開催まで2カ月を切った。新型コロナウイルスの感染が収まらないことから中止論も出ているが、さまざまな面から開催の意義は一層増している。開催へ向け国民が一致団結すべき時だ。
首相「コロナ克服の証し」
開催地東京などに出ている緊急事態宣言が6月20日まで延長されることになり、ワクチンは高齢者の接種完了が開幕時期に間に合うかという状況だ。
五輪を開催すれば、感染拡大の引き金になるのではないかとの不安は当然である。既に海外からの観客は受け入れを断念しているが、選手を含め大会関係者8万人近くが入国することへの不安は大きい。会場での感染、人流の増加の不安もある。
経済界でも賛否が分かれているが、経済効果は大きいはずだ。しかし、それ以上に重要な開催目的がある。参加することに意義があると言われる「平和の祭典」であることに加え、今回は「人類が新型コロナを克服した証し」(菅義偉首相)としての特別な意義が加わった。感染下でも「安心安全な大会」を開催し成功させれば、コロナとの戦いに苦しむ世界へ希望のメッセージとなるはずだ。
スポーツは単に個人が運動能力や技量、精神力を競うだけではない。そのスポーツマンシップが人々に感動を与える。特に五輪は、練習を積んできた選手たちの晴れ舞台というだけではなく、人々は自国選手の戦いから勇気と誇りをもらうのだ。
新型コロナ感染で、東京五輪・パラリンピックへの世界の関心は高まったとも言える。バッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長の発言には、困難な状況の中でも日本はホスト国の使命を果たしてくれるに違いないとの期待がうかがえる。今こそ、忍耐心、規律、団結力など日本の底力を示す時である。
参加各国では選手選考が急ピッチで進められている。IOCは、選手村に入る参加者の8割近くがワクチン接種を受けるとの見通しを示している。米製薬大手ファイザーからは、日本側に選手ら約2万人分のワクチンが提供される。海外からの参加者に対して、政府は水際対策の強化や行動把握などの検討を進めている。
新型コロナの感染拡大で、採算の面では大きな負担を背負うことになった。しかし開催できれば精神的に得るものは大きく、逆にできなかった場合、失うものはあまりにも大きい。
観客を入れての開催も十分可能だ。感染拡大以来、五輪開催も念頭にプロ野球やJリーグなどで感染予防策を研究・実施してきた。これまで大規模イベントでクラスター(集団感染)は起きていない。政府分科会の尾身茂会長は「選手やスタジアムの中での感染リスクはコントロールできる」と述べている。
不安には科学的根拠示せ
政府と大会組織委員会は早く適切な収容人数を各競技・会場ごとに決定してほしい。また、世論調査に表れている国民の漠然とした不安に科学的根拠を基に応えていく必要がある。感染対策をしながら現在続けられている聖火リレーと共に、大会機運を盛り上げる最大のポイントである。