日本は地球温暖化対策をリードせよ


 世界気象機関は、昨年の世界平均気温が、記録が残る1850年以来では2007年と並び観測史上6番目の高さだったと発表した。温室効果ガス濃度が上昇する中、気温は今後も上がり続けると予測している。

 優れた環境技術を持つ日本は、地球温暖化対策をリードする責任がある。

 異常気象で甚大な被害

 発表によると、世界の陸地と海の表面温度の平均は、基準としている長期平均(1961~90年)を0・50度上回り、14・50度となった。特にオーストラリアが高温となったという。

 温暖化の進行は異常気象の原因となる。フィリピンでは昨年、巨大台風が直撃し、7500人以上の死者・行方不明者を出した。日本でも伊豆大島で豪雨による土石流災害が発生し、36人が亡くなった。昨年夏の猛暑について、気象庁は「30年に1度の異常気象」としている。

 異常気象による人的、経済的被害は甚大であり、世界各国が協力して対策を講じる必要がある。しかし、昨年にポーランドで開かれた国連気候変動枠組み条約第19回締約国会議(COP19)で見られたように、温暖化対策をめぐっては先進国と途上国が激しく対立している。

 途上国は温暖化を招いたのは先進国の責任だとして、先進国に一層の負担を求めた。温室ガスの二大排出国である米国と中国も含めた排出削減の枠組みは、2015年に決定し、20年から実施する予定だが、この通りに進むかは不透明だ。

 日本はCOP19で、新たな削減目標を「05年比3・8%減」とした。しかし、これは1990年比で換算すると約3%増となる計算で、参加国からは批判を浴びた。

 こうした目標となったのは、二酸化炭素(CO2)を排出しない原発の再稼働のめどが立たないためだが、日本の温暖化対策の取り組みが後退したと国際社会に受け止められても仕方がない。

 日本は京都議定書の目標を達成するなど、温室ガスの削減で一定の実績を上げてきた。また、優れた環境技術も開発している。

 現在、CO2を排出する石炭火力発電が世界の電力生産の約4割を賄っている。石炭は天然ガスなどに比べ安価で、原油と違って世界各地で採掘が可能なためだ。今後も途上国を中心に根強い需要が見込まれている。一方、日本の石炭火力の熱効率は世界最高の水準だ。

 日本は既に、低炭素技術と温室ガスの排出枠を交換する「2国間クレジット制度」の導入で、モンゴルやバングラデシュなど10カ国と合意している。安倍政権は今後3年間で合意国を倍増させる目標を掲げているが、こうした取り組みを加速させることが大切だ。

 原発の安全審査を円滑に

 環境先進国の日本が削減目標を下げれば、温暖化対策をめぐる国際交渉にも悪影響を与えかねない。

 目標を上げるには、原発再稼働への道筋を付ける必要がある。原子力規制委員会の安全審査は停滞気味だが、温暖化対策の観点からも審査を円滑に進めてほしい。

(2月6日付社説)