運転40年超原発 再稼働同意を機に活用拡大を
運転開始から40年を超える関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町)と高浜原発1、2号機(同県高浜町)について、同県の杉本達治知事が再稼働への同意を表明した。原発の新増設が停滞する中、今回の再稼働同意を機に運転40年超の原発を活用する流れをつくるべきだ。
米国では80年運転も
3基は1970年代に運転を開始し、東京電力福島第1原発事故が発生した2011年から停止している。関電は15年に運転延長を申請し、16年に認可された。
原発事故を受けた原子炉等規制法の改正によって、原発の運転期間は原則40年とされた。その上で原子力規制委員会の認可を条件に、1回に限り最長20年の延長が認められた。
杉本知事は、安全確保や地域住民の理解、恒久的な地域福祉の向上を定めた「県原子力行政三原則」に基づいて検討したと説明。両町や県議会の意見などを踏まえて「総合的に勘案し、再稼働に同意することにした」と述べた。
既に両町や県議会は運転を容認する姿勢を示しており、今回の知事の同意で再稼働に必要な地元手続きは完了した。福島第1原発事故後、40年の運転期間を超える原発の再稼働に地元が同意したのは初めてだ。3基は中央制御盤など多くの機器が最新型に取り換えられ、老朽化しているとの批判は当たらない。
40年超運転は欧米を中心に広く実施されている。国際原子力機関(IAEA)などによると、世界の原発444基のうち約3割の123基が該当する。米国には46基あり、うち4基は80年運転が認められている。日本でも、原則40年で20年延長を1回限り認めるという運転期間を見直す必要がある。また、原発が停止している期間は運転期間に含めるべきではあるまい。
菅義偉首相は、米国主催によるオンライン形式での気候変動サミット(首脳会議)で、30年度の温室効果ガス削減目標を現行の「13年度比26%減」から「同46%減」に大幅に引き上げる方針を表明した。この目標を達成するには、発電時に二酸化炭素(CO2)を出さない原発の活用が不可欠だ。
政府は30年度の電源構成で、原子力を20~22%とする目標を掲げている。しかし、18年度の実績は6%にとどまった。比率を引き上げるには原発30基程度が必要とされるが、福島の原発事故後に再稼働までこぎ着けたのは9基にすぎない。
一方、30年には高浜3、4号機を含む11基が運転40年以上となる。原発を活用し続けるのであれば、運転40年超の原発を再稼働させなければならない。
東日本では、日本原子力発電の東海第2原発(茨城県)が40年超の運転を許可されている。だが地元の理解を得られず、再稼働のめどは立っていない。政府には、運転40年超原発を活用する必要性について丁寧に説明することが求められる。
次期基本計画で方針示せ
政府は、中長期のエネルギー政策の指針となる次期基本計画を6月にも策定する。新増設や運転40年超の再稼働など、さまざまな形で原発を活用する方針を明確に示すべきだ。