ワクチン接種、副反応にも万全の対処を


 厚生労働省が製造販売を特例承認した米製薬大手ファイザーとドイツのバイオ企業ビオンテックが開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、菅義偉首相は国会で「17日には医療関係者への接種を開始したい」と述べた。

 国家の「一大プロジェクト」(菅首相)として、コロナ禍の封じ込めに力を尽くすべきだ。

 戦略物資に格上げを

 菅首相は「都道府県や市町村と連携をしながら政府一体となって現在準備に取り組んでいる」と説明。「できる限り速やかに情報提供を進めるとともに、必要な費用は国がすべて負担」することを確約した。

 接種は努力義務の位置付けで無料。対象は16歳以上で、過去にワクチンの成分で強いアレルギー反応「アナフィラキシーショック」が起きた人は対象外にする。

 医療従事者向けに先行接種され、4月1日以降に65歳以上の高齢者、続いて基礎疾患のある人や高齢者施設などの従事者が続く予定。原則3週間の間隔を空けて2回接種される。ワクチン担当の河野太郎規制改革担当相は、広く若い世代も対象となる際には職場でも受けられるよう検討する考えを示した。ワクチン接種への素早い対応を評価したい。

 今後、接種現場での混乱は極力避けなければならない。先行して行われたある自治体の模擬接種の場では「問診の時間がかなりかかりそうだ」という医師の見解があった。副反応に対する国民の懸念は小さくなく、事前に可能な限り説明を果たし、被接種者が納得して行えるようにすべきだ。

 河野担当相は「副反応はゼロにできないが、ベネフィットがリスクを上回る」と強調し、重篤な副反応に現場で医師が対応できる体制をつくると約束した。ワクチンの保管にも細心の注意がいる。零下70度に維持される必要から、超低温冷凍庫を備える医療機関などの「基本型施設」は約1万カ所指定される予定だが、遺漏は許されない。

 今回、ワクチンは緊急時に審査を簡略化できる特例承認に基づいて承認された。わが国では異例のことだ。既にファイザーの臨床試験(治験)で95%の予防効果が確認されていたことが大きい。治験、承認についても、今後とも十分な知見と経験が必要だ。

 日本には以前から感染症に関する優秀な研究者は多く、ワクチン開発の潜在能力は高い。しかし、ワクチン製造そのものには非常に消極的だった。過去、ワクチンの副作用で国が訴えられると、ほとんどのケースで敗訴したため、当局が製造許可に躊躇(ちゅうちょ)したという理由が大きい。だが、菅政権はコロナ禍を奇貨としてワクチン行政に力を入れ、ワクチンを戦略物資級に格上げすべきだ。

 治療薬の利用も期待

 一方、ノーベル医学生理学賞受賞者の大村智博士が開発に貢献した抗寄生虫薬「イベルメクチン」が先月末からコロナの治療薬として使用され効果を表し始めた。

 ワクチンと共に、コロナ撲滅の強力な武器となることを期待したい。