電力需給逼迫、大規模停電防止に尽力せよ


 厳しい寒さが続く中、暖房使用の増加によって電力需給が逼迫している。

 電力の供給が止まれば生命や健康に関わる事態となる。各大手電力は古い火力発電所の稼働も含め、電力を安定的に供給できるよう尽力する必要がある。

最大使用率99%の日も

 昨年末からの厳しい寒さや大雪などの影響で、特に西日本の電力供給はぎりぎりの状況となっている。12日は沖縄を除く9大手電力管内で供給力に対する使用率が9割を超えた。

 各社の発表によると、午後8時までの最大使用率は関西電力で99%、四国電力は98%に達した。安定供給に最低限必要な予備率は3%で、使用率が97%を超えると厳しい状況となる。

 こうした状況では大規模停電(ブラックアウト)が生じかねない。関電管内では、東京電力や中部電力から電気の融通を受けただけでなく、高圧発電機車も30台以上出動するなど電力の確保に追われた。

 現在は真冬である。ブラックアウトが発生すれば、多くの住民の健康が奪われかねない。今後も寒さは続くが、最悪の事態は何としても防がなければならない。

 電力需給逼迫の背景には、火力発電の燃料となる液化天然ガス(LNG)が不足していることがある。LNGはほぼ全量を海外から輸入しているが、国内在庫は2週間分しかない。新型コロナウイルスの感染拡大によって調達が難航していることに加え、やはり寒波が襲来している中国や韓国がLNGの確保に力を入れていることの影響も大きい。

 降雪によって太陽光発電の発電量が急減したことも一因となっている。天候に左右される欠点が改めて浮き彫りとなった形である。

 さらに原発の再稼働が停滞していることも、今回の電力不足につながったと言える。政府が安価で継続的に発電できる「重要なベースロード電源」と位置付ける原発を十分に活用できず、全発電量の76%を火力が占めているのが現状だ。

 ブラックアウトといえば、2018年9月に北海道ほぼ全域の約295万戸で停電が発生したことが記憶に新しい。この時は地震で北海道電力苫東厚真火力発電所が停止したことが原因だったが、運転停止していた北海道電泊原発が稼働していればブラックアウトは防げていたとも指摘されている。

 エネルギー資源のほとんどを海外からの輸入に頼る日本で、原発の活用は不可欠だ。電力の安定供給のためにも、政府は原発がスムーズに再稼働できるよう努めるとともに、原発新増設の方針を明示すべきだ。

できる範囲で節電を

 コロナ禍拡大に伴う外出自粛で家庭での電力消費が増えていることも、需給逼迫(ひっぱく)の一因となっている。大手電力で構成する電気事業連合会は「暖房は通常通りに使用を」としつつ、不要な照明を消すなど節電への協力を呼び掛けている。

 無理な節電は健康を損なうことにもなりかねない。一人一人ができる範囲で節電を心掛け、この厳しい状況を何とか乗り越えたい。