新年日本の課題 コロナ克服し未来へ布石を


 新型コロナウイルス禍の中、2021年が明けた。今年の課題はまず、新型コロナの収束にあることは間違いない。一方、国内外が大きな変動期にある中で直面する喫緊の課題、そして国の命運を左右する中長期の課題への取り組みを進めていく必要がある。

 厳しさ増す国際環境

 年明け早々、小池百合子東京都知事はじめ首都圏4知事が、新型コロナ感染拡大を抑えるため、政府に緊急事態宣言の発出を要請。西村康稔経済再生担当相は、国として受け止め検討する意向を示した。医療提供体制の逼迫(ひっぱく)も伝えられる。

 ただ感染対策は、実効性のあるものでなければならない。新型コロナに関する知見が不足していた昨年4月の緊急事態宣言時とは状況が異なる。社会経済活動との両立を考えれば、新型コロナ対策の特別措置法の改正こそ急ぐべきである。

 今年は東京五輪・パラリンピックが7~9月に予定されている。この大会を「人類が新型コロナを克服した証し」として成功させたい。

 一方、わが国を巡る国際環境は一層厳しいものになりつつある。最も警戒すべきは、沖縄県・尖閣諸島周辺で領海侵犯を繰り返し、こうした動きを既成事実化しようとする中国である。米国で中国に強硬姿勢を取り続けてきたトランプ政権から民主党のバイデン政権に移行した場合、中国はより露骨な侵犯行為を行う可能性が高い。日本は断固とした措置を取る覚悟でその備えをしておく必要がある。同盟国の米国や他の民主主義国家との連携も強化すべきだ。

 米国が衰退に向かう中、日本が自主防衛力の増強で力の空白を埋めていく必要がある。しかし安全保障政策の足かせとなっているのが、現行憲法である。

 憲法改正を政権の最重要課題に掲げた安倍晋三前政権だったが、野党は改憲論議から逃げ、いわゆる「モリカケ問題」で政権を攻撃し続け、改憲の動きを事実上頓挫させた。

 安倍政権を引き継いだ菅義偉首相は、臨時国会の所信表明演説で改憲について、憲法審査会で議論を行い「国民的な議論に繋(つな)げていくことを期待する」と述べるに留まった。新型コロナへの対応に追われる現状とはいえ、国の存立に関わる課題への不作為、怠慢は許されない。

 コロナ禍は、わが国にも大きな損失をもたらした。だが、それによって課題や弱点が炙り出され、改革への取り組みも起きている。縦割り行政の非効率やデジタル化の遅れから、デジタル庁の9月新設が決まった。新型コロナ禍が続く中、新しい働き方としてテレワークが普及しつつある。政府はこうした動きを強く後押しすべきである。

 地方移住を本格化させよ

 日本が抱える中長期的な問題に少子高齢化と地方消滅の危機がある。新型コロナの感染リスクの高い東京圏から地方移住の動きが特に若い世代で起きている。昨年5月、初めて東京からの転出が転入を上回った。政府がどれだけ旗を振っても変わらなかった東京一極集中に是正の動きが出てきたのである。政府や自治体は、この機会を逃すべきではない。