大麻検挙最多、恐ろしさ伝え乱用撲滅を
法務省が公表した2020年版の犯罪白書によると、19年の大麻取締法違反の検挙数は前年比21・5%増の4570人と過去最多を更新した。
このうち20代以下の若者が半数以上を占める。若者に大麻の恐ろしさを伝え、蔓延(まんえん)防止を徹底すべきだ。
若年層の増加が顕著
大麻取締法違反は14年から6年連続で増加。20代は28・2%増の1950人、20歳未満は42・0%増の609人と20代以下で全体の半数を占め、若年層の増加が顕著だった。
東海大では今年10月、硬式野球部の部員2人の大麻使用が確認されたほか、男子学生と卒業生の2人が東京都町田市の駐車場で大麻を所持したとして逮捕された。近畿大でもサッカー部の男子部員5人が大麻を使用していた。今年に入っても若年層を中心とする増加傾向に歯止めがかかっておらず、早急な対策が求められる。
近畿大の5人は、大学の聞き取り調査に「新型コロナウイルスのせいで暇になり、興味本位でやった」と回答している。日本では大麻取締法で大麻の栽培や所持、譲渡、輸出入を原則禁止しており、無許可で栽培や輸出入をした場合は7年以下(営利目的の場合は10年以下)、所持や譲渡した場合は5年以下(同7年以下)の懲役と定めている。重大な違法行為であるにもかかわらず「興味本位」とはあまりにも軽率である。
若者が安易に大麻に手を出す背景には、インターネット上で「害がない」「依存性もない」などの誤った情報が広まっていることがある。白書は、若者が「薬物の影響を誤解して使用を開始している可能性は否定できない」と分析している。
大麻に含まれる有害成分のTHC(テトラヒドロカンナビノール)は幻覚作用や記憶力の低下をもたらし、乱用を続ければ大麻精神病を引き起こすようになる。好奇心に駆られて大麻を使えば、取り返しのつかない事態を招く恐れがある。家庭を破壊するなど人生を台無しにすることにもなりかねない。
海外の一部で大麻が合法化されていることも、日本での使用の増加につながっていよう。ただ合法化は犯罪組織への資金源断絶などが理由で、決して大麻が安全だからではないことを認識する必要がある。日本でも合法化を呼び掛ける意見があるが、極めて浅薄で無責任だと言わざるを得ない。
大麻は覚醒剤など他の薬物使用のきっかけになりやすい「ゲートウエードラッグ(入門薬)」の一つとされる。白書の特別調査によれば、覚醒剤の使用経験がある男女699人のうち、351人に大麻の使用経験があった。
大麻を使えば薬物全体へのハードルが低くなり、快楽を求めてより危険な薬物に手を出すようになる。大麻の乱用防止を徹底することで、他の薬物による汚染も防ぐべきだ。
防止教育に一層の尽力を
学校では、これまで以上に薬物の乱用防止教育に力を入れていく必要がある。
正しい知識を若者に伝え、乱用撲滅を目指していかなければならない。