中国船違法操業 拿捕などで取り締まり徹底を


 日本の排他的経済水域(EEZ)内にある日本海の好漁場「大和堆(やまとたい)」周辺で、中国漁船の違法操業が急増している。

 政府は日本の漁業者と水産資源を守るため、中国漁船を拿捕(だほ)するなど取り締まりを徹底すべきだ。

 北朝鮮が漁業権売却か

 石川県・能登半島沖の大和堆は、スルメイカやベニズワイガニなどの好漁場として知られ、外国漁船による違法操業が後を絶たない。昨年10月には北朝鮮漁船と水産庁の漁業取締船が衝突し、漁船が沈没する事案が起きている。

 今年は、中国漁船が大挙して押し寄せている。水産庁が退去するよう警告した中国漁船は、昨年1年間で1115隻だったが、今年は今月5日時点で4035隻に急増した。一方、昨年は4007隻だった北朝鮮漁船は、1隻に激減している。新型コロナウイルス対策で出漁できないからだ。

 ただ9月末に北朝鮮公船が日本のEEZ内に侵入したため、政府は安全を確保する必要があるとして、漁業者に周辺での操業自粛を要請した。自粛解除後も中国漁船が海域を占拠し、日本漁船が十分に操業できない状況が続いている。

 中国漁船が2017~18年にこの海域で行ったスルメイカ漁の漁獲量は、日本と韓国の合計に匹敵する4・4億㌦(約460億円)に上るという。日本は漁業主権法で、EEZ内での許可のない外国漁船の操業を禁じている。中国漁船が日本の水産資源を奪っていくのを看過することはできない。

 外国漁船によるEEZへの侵入を防ぐのは水産庁や海上保安庁の役割だが、中国漁船の隻数が多いため、阻止し切れていない。大半の中国漁船の大きさは北朝鮮漁船の数倍で密漁規模も大きく、漁業資源の枯渇につながりかねない。

 操業自粛の際には、日本の漁業者から「なぜ主権海域で自粛しなくてはいけないのか」と憤りの声が上がった。当然のことだ。自民党の合同会議では、操業自粛を求めた政府の対応を「主権侵害を認めてしまった」と問題視する声も上がった。政府は中国漁船を拿捕するなど厳しく取り締まって違法操業防止を徹底すべきだ。中国にも強く抗議する必要がある。

 中国漁船の違法操業急増をめぐっては、北朝鮮が外貨獲得のため、中国に漁業権を売却した疑いが浮上している。国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会・専門家パネルによると、北朝鮮の漁業許可証は19年時点で前年の2倍以上の3カ月当たり40万元(約637万円)で密売されていた。日本のEEZ内に侵入した北朝鮮公船は、中国船の操業を支援するために来たとの見方もある。

 国際社会は実態調査を

 北朝鮮の漁業権売却は安保理決議で禁じられているが、最近の経済難で拡大しているとされる。事実であれば、中国が北朝鮮の制裁逃れに手を貸していることになる。

 このような中国に安保理常任理事国の資格はあるまい。日本をはじめとする国際社会は調査を進め、実態を白日の下にさらすべきだ。