文献調査開始 最終処分地への理解広げたい
原子力発電環境整備機構(NUMO)は、北海道の寿都町と神恵内村で高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選定の第1段階に当たる「文献調査」を全国で初めて開始した。
使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクル政策を進めていく上で、選定は避けて通れない課題だ。調査開始をきっかけに、最終処分地に対する理解が地元だけでなく日本全国に広がることを期待したい。
地震や地層の記録を分析
文献調査では、過去の地震や地層に関する各地の記録を分析し、政府やNUMOの担当者らが地元住民と対話を重ねる。こうした作業に2年程度費やし、住民の同意が得られれば、ボーリングで地層を調べる第2段階の「概要調査」を4年程度実施。さらに約14年かけて地下施設を使った第3段階の「精密調査」を行い、対象地を決定する。
核のごみは、原発で使用した核燃料から再利用できるプルトニウムなどを取り出した後に残る廃液を、ガラスと混ぜステンレス容器の中で固めたものだ。最終処分では、有害物質を封じ込める特殊な処理を施し、300㍍より深い地下に埋設する。
強力な放射能を帯びており、安全なレベルに低減させるには数万年以上の期間を要する。地元住民の強い不安が予想されるため、概要調査や精密調査に進むには知事と市町村長の「意見を聞き、尊重する」ことが法律で義務付けられている。住民の不安を払拭(ふっしょく)して理解を得なければならない。
文献調査をめぐっては、2007年に高知県東洋町が応募したが、調査が実施される前に撤回した経緯がある。2町村は今年10月、文献調査への応募や受け入れを決定した。
ただ風評被害に対する住民の懸念は根強く、賛否は割れている。今月には応募の是非を問う住民投票条例の制定が寿都町議会で否決された。
NUMOと住民との意見交換の場では、調査の進捗状況だけでなく、地域振興策についても話し合われる。文献調査を受け入れた地方自治体は国から最大20億円の交付金を得られる。地域活性化の観点から考慮することも求められよう。
原発の使用済み核燃料を再利用し、エネルギー資源の安定的な確保を目指す核燃料サイクルの推進に、核のごみの最終処分地選定は欠かすことができない。資源に乏しい日本にとっては極めて重要な課題だ。
日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)の完成も急がれる。7月に原子力規制委員会の安全審査に合格した工場は、年間最大800㌧を再処理し、核のごみも減らすことができる。
核燃料サイクルは不可欠
11年3月の東京電力福島第1原発事故によって、国民の原発に対する不安は強まった。だがエネルギー安全保障や地球温暖化防止のため、原発や核燃料サイクルは不可欠だ。
政府は原発の再稼働を進めて新増設の方針を明示するとともに、核のごみの最終処分地に最適な地域を見いだすため、処分地についての情報発信などを通じて文献調査への応募の動きを全国に広げる必要がある。