バッハ会長来日 五輪開催実現が世界の希望に


 「五輪の聖火がトンネルの先の明かりになる」。来日した国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は、新型コロナウイルスの影響で延期となった東京五輪・パラリンピック開催実現への決意をアピールした。開催国の日本はその意義を再確認し、準備を加速する時だ。

 不退転の決意を示す

 バッハ会長は、菅義偉首相、森喜朗大会組織委員会会長、小池百合子東京都知事らと会談した。会談後の記者会見で「参加者全てにとって安全な大会になることを担保する」と強調。来夏の大会までにはワクチンの入手が可能との見通しを示した上で、参加者への接種費用はIOCが負担することを表明した。開催実現への決意を具体的な形で示すものとして評価したい。

 首相は、東京ドームや横浜スタジアムのプロ野球の試合で感染対策を取りながら入場制限を緩和した実証実験を行うなど、観客の参加を想定したさまざまな検討を進めていると説明。バッハ会長は「スタジアムに観客を入れることに関して確信を持つことができた」と述べた。

 入場者の数については「結論を出すのは時期尚早だが、安全を最優先する」と語った。日本国内や世界の新型コロナ感染状況、ワクチンの開発、接種がどうなるかが未知数の現状としては当然だ。しかし訪日客も含めて、観客を入れての開催を何としても実現したい。

 バッハ会長は、都内の選手村と国立競技場も訪れた。選手村では川淵三郎村長らの案内で居住棟などを視察して「ソーシャルディスタンス(社会的距離)は十分取れる。選手は安全な気持ちで過ごせると思う」との感想を述べた。バッハ会長の来日と一連の発言は、いまだに五輪開催の実現に懐疑的な日本および世界の人々に不退転の決意を示す狙いがあったとみられる。

 確かに世界ではいまだ感染拡大状況にあり、ロックダウン(都市封鎖)も行われている欧州では、12月にセルビアで開催予定だったレスリング世界選手権など国際競技大会の中止が相次いでいる。五輪の予選は来年から本格的に行われると思われるが、それまでに感染が収束するか予断を許さない。

 日本でも感染拡大の第3波襲来で厳しさが増している。それでも、今月には日米中露4カ国が参加しての体操の国際大会が無事開催できた。大相撲も、人数制限はあるものの感染対策を実施しながら行われている。

 日本国内で五輪開催ムードが盛り上がらない現状に対して、森会長は「共感を得られるように、あらゆる努力をしている」と述べているが、もっと力強いメッセージが欲しい。

 コロナに打ち勝った証し

 東京五輪・パラリンピックを「世界が新型コロナに打ち勝った証しとして開催したい」という安倍晋三前首相や菅首相による意義付けを再確認したい。難しい時だからこそ、開催の意義はこれまでのどの大会よりも重いものがあるのだ。

 感染対策と社会経済活動の両立は世界的な課題でもある。五輪・パラリンピック開催でそれを成功させることによって、日本はコロナ禍に苦しむ世界の希望の光となりうる。