日米豪印 対中連携の枠組み強化を


 中国のインド太平洋地域への影響力の伸長に伴い、民主主義国家の間で安全保障協力を強化する動きが進んでいる。

 日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国政府は10月上旬に東京で外相会談を開催する方向で調整に入った。インド太平洋の各地で覇権主義的な動きを活発化させる中国を牽制(けんせい)する狙いがある。

 安保対話拡大の可能性も

 日米豪印の枠組みは、安倍晋三前首相がインド太平洋地域で影響力を増す中国に対抗するため打ち出したものだ。民主主義や法の支配といった基本的価値を共有し、中国を取り囲むように位置する4カ国が外交・安保面で連携する構想だ。4カ国による安保対話は「クアッド」と呼ばれる。

 もともとは第1次政権時の2007年8月、インド国会で「二つの海の交わり」と題した演説を行った際に提唱された。日米豪印が中心的な役割を求められている「自由で開かれたインド太平洋」構想を進めるためにも、一層の関係強化に努める必要がある。

 中国は、チベット、新疆ウイグル、内モンゴルなどの少数民族に対して強引な漢化政策を進め、国家安全維持法で香港の一国二制度を骨抜きにした。こうした人権弾圧を看過できないのは当然である。

 さらに台湾統一に向け、武力行使も辞さない方針を示すなど地域の平和と安定を脅かしている。沖縄県・尖閣諸島沖では領海侵入を繰り返し、国際法に違反して南シナ海の軍事拠点化を強行した。

 日米豪印を中心とする民主主義国家は、共産党一党独裁体制の下で膨張政策を強化する中国と厳しく対峙(たいじ)することが求められる。

 トランプ米政権は中国への対抗を念頭に、4カ国の枠組み強化に意欲を示している。ビーガン国務副長官は先月末、中国の脅威に立ち向かうため、クアッドを拡大する可能性があると述べた。

 4カ国に韓国、ベトナム、ニュージーランドを加え、毎週会合を行っていることも明らかにした。対中連携の枠組みを着実に広げていくべきだ。

 さらに、ビーガン氏は「インド太平洋地域には、明らかに北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)のような強力な多国間構造がない」と指摘。クアッドの枠組みを「NATOに準じたものに拡張して公式化することを米国は目指している」との発言は注目される。

 日米印3カ国は毎年、海上軍事演習「マラバール」を合同で行っている。この演習に豪州を招待することも検討されているという。4カ国合同の演習が実施されれば、対中包囲網強化に資するだろう。

 首相は信頼関係構築を

 中国の脅威が高まる中、日本が単独で安保をめぐる課題を解決することはできない。菅義偉首相は安倍前政権の取り組みを継承し、日米同盟を強化するとしている。

 日米豪印外相会談では、菅首相との面会も調整されている。民主主義国家による対中連携強化に向け、まずは各国との信頼関係構築に努めてほしい。