イベント緩和 五輪・パラ開催の試金石に
政府が新型コロナウイルス対策として行ってきたイベントの参加人数の制限が緩和された。経済社会活動の活性化へ弾みとなることを期待したい。一方で東京都などで再び増加の傾向にある感染状況を見ながら、柔軟な対応も求められる。
「5000人」の制限撤廃
これまでイベントの参加人数制限は「5000人以内」か「収容人数の50%以内」のどちらか厳しい条件が適用されてきた。それがプロ野球やJリーグなど収容人数1万人以上のイベントについては「5000人以内」の制限が撤廃される。
1万人以下のイベントについては、観客や演者が大声を出さないクラシックコンサートや映画、演劇、歌舞伎などは「50%以内」の制限をなくす。観客が声を出すライブハウスやロックコンサートは「50%以内」の制限を続ける。
主催者側は当然この措置を歓迎する一方で、感染拡大を警戒し慎重な姿勢も見える。東京ドームを本拠地とする巨人は21日の試合から上限を1万9000人とし収容率は約40%。ナゴヤドームに本拠を置く中日は9月中の試合は上限が1万1000人で収容率30%。メットライフドームの西武も1万人、収容率30%にとどめる。
一方、ヤクルトやDeNAは50%近くまで引き上げる。両球団は本拠地が神宮球場、横浜スタジアムと野外球場であり、換気の面で感染リスクが低いとの判断とみられる。
サッカーでは、Jリーグ1部の浦和が6万2000人を収容できるホームの埼玉スタジアムで9月中は7000人、収容率10%にとどめる。サポーターが歌ったり大きな声を出したりする応援スタイルのJリーグは、各クラブとも9月中は収容率30%を目安とし、段階的に引き上げる方針だ。
主催者側は、入場に際しての検温やソーシャルディスタンスの確保など感染対策を徹底してほしい。
感染を抑えながら一定数の観客を収容してスポーツイベントを成功させることができるが否かは、来年の東京五輪・パラリンピック開催を実現させる重要な試金石となる。そこで得られる経験やデータは、安全な開催のための貴重なヒントを提供してくれるだろう。
東京都の新規感染者数は8月中旬以降減少してきたが、今月16日までの1週間を見ると1日当たり平均181・3人で、前週の148・6人より増加している。感染経路を見ると、ひと頃多かった「夜の街」関連が減少する一方で、家庭内感染が4割近くに上っている。いずれにしても予断を許さない状況が続いている。
西村康稔経済再生担当相は「踏んできたブレーキをゆっくりと慎重に上げ、感染防止策と経済社会活動の両立を図っていく」と語っている。状況次第でブレーキを戻す柔軟性も必要だ。
一人一人が予防策徹底を
昨日からの4連休も重なり、人出はかなり戻りつつある。経済社会活動と感染防止の両立の鍵は、主催組織の感染予防策の徹底と一人一人が基本的な予防策を怠らないことにあることを改めて確認しておきたい。