あおり運転 厳罰化で防止徹底を図れ


 「あおり運転罪」を盛り込んだ改正道路交通法がこのほど施行された。
 あおり運転をめぐっては、これまで悲惨な事件が繰り返されてきた。厳罰化で防止徹底を図るべきだ。

直ちに免許取り消し

 改正法ではあおり運転について、車両の通行を妨害する目的で異常に接近したり、急ブレーキや割り込みをしたりする行為と規定された。不必要なハイビームやクラクションの他、高速道路での低速走行、駐停車も対象となる。

 法定刑は、暴行罪(2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金)よりも重い「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」となった。あおり運転の悪質性を踏まえたものだと言える。高速道路で他の車を止めるなどの「著しい危険を生じさせた場合」は「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科される。

 違反点数は直ちに免許取り消しとなる25点(欠格期間2年)と定められた。厳しい処分だが、あおり運転の危険性を考えれば当然だろう。「著しい危険」では35点(同3年)、前歴や累積点数があると、欠格期間は最大で10年となる。

 さらに、あおり運転で死傷事故を起こした際に厳罰を科すため、危険運転致死傷罪の要件が拡大された改正自動車運転処罰法も施行された。被害者を負傷させた場合は「15年以下の懲役」、死亡させた場合は「1年以上20年以下の懲役」となる。

 あおり運転については、2017年6月に神奈川県大井町の東名高速道路で、追い越し車線に停車させられ、その後トラックに追突されて一家4人が死傷する痛ましい事件があった。昨年8月には茨城県内の常磐自動車道で、男が無理やり停車させた乗用車の男性を殴る事件も発生している。

 厳罰化の背景には、こうした許し難い事件が繰り返されているにもかかわらず、道交法にあおり運転を罰する規定がないという法の不備があった。東名高速の事件に関しても、横浜地裁の裁判員裁判では、被告の「時速0㌔」の停止が危険運転とは認められなかった。

 全国の警察が、昨年1年間に道交法の車間距離保持義務違反で摘発したあおり運転の件数は1万5065件(前年比2040件増)に上った。高速道路での違反(1万3787件)が大半だったという。警察は厳罰化を危険な運転の減少につなげる必要がある。

 特に、若い世代への周知徹底が求められる。警察庁によると、昨年までの2年間に暴行罪や危険運転致死傷罪などを適用したあおり運転計133件では、免許保有者10万人当たりで10代が加害者(0・57人)、被害者(1・13人)ともに最多で、20代がそれぞれ2番目だった。あおり運転が重大事故につながることを知らせるべきだ。

車にレコーダーの設置を

 一方、ドライブレコーダーや防犯カメラ、スマートフォンなどの映像があった場合の検挙事例は約80%に上る。

 レコーダーの設置が進めば、抑止効果も高まろう。設置の有効性についての啓発強化も進めてほしい。