防衛装備品 政府は輸出支援の強化を


 三菱電機が製造する高性能対空レーダーが、フィリピン政府向けに輸出される見通しとなった。実現すれば、2014年4月に政府が武器輸出基準として「防衛装備移転三原則」を定めてから国産装備の完成品を輸出するのは初めてとなる。

防空レーダーを比に

 輸出するのは固定式防空レーダー「FPS3」と移動式「TPSP14」のいずれも改良型で、ミサイルや航空機の探知・追尾に使われる。受注総額は100億円程度となる。

 背景には、南シナ海での中国の軍備増強がある。今年4月には空母「遼寧」を派遣した上、南シナ海に行政区を設置するなど領有権の既成事実化を進めている。日本はこうした事態を警戒しており、レーダー輸出には比軍の警戒監視能力の向上を間接的に後押しする狙いもある。

 政府は1976年以来、武器や関連技術の海外移転を原則禁じてきたが、防衛装備移転三原則は日本の安全保障に資すると判断されれば認める内容で、日本の安保政策の転機となった。しかし装備品市場では各国が官民を挙げ売り込みを図る中、日本勢は価格面の競争力の低さなどで苦戦が続いてきた。

 政府は2015年5月、オーストラリアが計画する次期潜水艦の共同開発の受注手続きに参加することを決め、ドイツやフランスと受注を競った。日本は、三菱重工業と川崎重工業が建造する「そうりゅう」型潜水艦をベースにした建造計画を提案したが、豪州は共同開発相手に仏企業を選んだ。

 日本は高い技術力を持つ半面、武器の輸出・共同開発の経験が乏しいのがネックとなった。生産拠点を豪州に移すことにも慎重だったため、地元から軍需産業や雇用の維持を不安視する声が上がった。

 防衛装備移転三原則には技術に関する情報提供の制約が多いなど、厳格な手続きを設けている。このことも輸出や共同開発が進まない原因の一つとなっている。政府は運用の緩和などを検討すべきだ。

 日本では近年、米国からの武器調達が急増する一方、国内企業への発注は減少している。防衛産業の衰退は安保上大きな懸念材料となる。16年公表の防衛装備・技術政策に関する有識者会議の報告書は、防衛産業を「日本の防衛力を根底から支える重要な基盤」と位置付けている。政府は業界再編を主導し、輸出支援を強化する必要がある。

 一方、防衛省は15年度、防衛分野に応用できる先端研究を公募・資金助成する「安全保障技術研究推進制度」を始めた。安保に関わる技術を向上させていくことは国家と国民を守るために極めて重要だ。

 ところが、日本学術会議が17年3月に発表した声明の中で、この制度について「政府による介入が著しく、問題が多い」と指摘するなど、学界では批判的に捉える見方が強いようだ。日本学術会議は、1950年と67年にも軍事研究を行わないとする声明を出している。

安保に寄与する技術を

 だが、軍事技術と民生技術を区別するような考え方は非現実的だ。安保に寄与する技術開発を期待したい。