同性パートナー制度 「性」を混乱させて危険だ
わが国の性秩序を乱すとともに、結婚制度を混乱させる制度が全国に広がりつつある。同性のカップルを結婚相当の関係と見なす「パートナーシップ制度」だ。いわゆる「LGBT」(性的少数者)の活動家による働き掛けを受け、その考え方に理解を示す首長が主導して導入に至る自治体が多いが、この制度が社会に及ぼす影響をどれほど理解しているのか、はなはだ疑問である。
五輪原則改訂で導入急増
「多様な性」という考え方が制度の背景にある。性のありようは一人ひとり違うのだから、その性行動は個人の意思に任せられるべきだというのだ。しかし、なぜ同性カップルを結婚相当の関係として夫婦同様に扱う必要があるのか、理解に苦しむ。
この制度がさらに広がれば、性秩序が乱れて一夫一婦の婚姻制度の維持が難しくなる。結局、社会の安定した発展の基盤を失うことになるから、極めて危険である。
新年度から制度を導入したのは、さいたま市、新潟市、相模原市、浜松市など13自治体を数える。これで2015年11月、東京都渋谷区と世田谷区で始まって以来、導入自治体は全国で47に達した。パートナーシップの発行を受けたカップルは、公営住宅の入居資格などを得ることになる。
一気に増えたのは、夏に東京五輪開催を予定していたことが大きい。14年末、国際オリンピック委員会(IOC)が「オリンピズムの根本原則」を改訂し、差別禁止の対象項目として人種、肌の色、性別、宗教などに性的指向を追加していたことで、五輪前の導入を目指した運動が活発化していた。
だが、LGBT当事者への差別禁止と、同性カップルの関係を結婚相当の関係として扱うことは全く次元の異なる問題なのだが、五輪が来夏に延期になったことで、それまでに同制度を導入しようという動きもさらに出てくることが予想され、注意が必要だ。
制度導入は、渋谷区をはじめとした3自治体以外は、首長の権限で決めることのできる「要綱」で行っている。これだと効力は弱いが、条例を制定して導入しようとすると、住民の反対が強い上、議会で可決されるのが困難な場合が多いからだ。
実際、パートナーシップを規定した条例案の議会提案を予定していた首長が、議会の反対が強く提案を見送った自治体もある。中には、条例制定を断念し、要綱で導入した自治体もある。議会での議論を経ず、住民の理解も得ないまま制度が広がることは、民主主義の観点からも問題が大きい。
社会発展支える一夫一婦
パートナーシップは、行政による同性カップルの“公認”だが、その危険性はわが国が一夫一婦の婚姻制度を採っている理由を考えれば、容易に理解できよう。性関係を一組の男女に安定させることは、次世代の健全な成長に不可欠であり、ひいてはそれが社会の発展につながるからだ。その婚姻制度の意義を確認すれば、同性カップルの関係を結婚相当と見なすことがいかに間違っているかが分かるはずである。