女川原発 スムーズな再稼働の実現を


 原子力規制委員会は、東北電力女川原発2号機(宮城県)について、再稼働に必要な新規制基準を満たしたとする審査書を正式決定した。

 震災時に冷温停止に成功

 正式決定は9原発16基目で、東北地方の原発では初めて。東日本大震災の被災原発では日本原子力発電東海第2原発(茨城県)に続き2基目となる。

 女川原発は震災時、高さ約13㍍の津波に襲われたが、主要施設が海抜14・8㍍の高台にあったことなどから冷温停止に成功。東京電力福島第1原発で起きた炉心溶融(メルトダウン)には至らなかった。

 女川原発のある三陸海岸は、これまでの歴史で多くの津波に襲われてきた。このため、敷地の高さは過去の津波を調査して決定された。引き波で潮位が低下しても冷却用の水を確保できるように、取水路を内向きに傾斜させて水をためやすくするなどの細やかな工夫も施された。

 女川原発が未曽有の大地震や大津波に耐えたことは高く評価される。震災後は避難所として300人以上の被災者を受け入れたことも忘れられない。

 だが安全審査は、13年12月の申請から約6年もかかった。いくら何でも審査期間が長過ぎるのではないか。被災原発とはいえ、事故を起こしたわけではないのである。

 福島第1原発の事故後に再稼働した原発は全国で5原発9基にとどまる。特に、事故を起こしたのと同型の沸騰水型原子炉(BWR)の再稼働は、現在のところ1基もない。しかし、事故を未然に防いだ女川原発もBWRである。十分な安全対策を施した上で、BWRも活用すべきではないのか。

 東北電は耐震補強などの対策工事を20年度中に完了させ、21年度以降の再稼働を目指す。もっとも、再稼働には宮城県と同県石巻市、女川町など地元自治体の同意も必要となる。

 宮城県の村井嘉浩知事は、再稼働の是非の判断について「いたずらに長引かせず、拙速と言われないようにしたい」と述べた。県議会の意見を聞き、今夏にも判断する見通しだ。再稼働をスムーズに実現できるよう後押ししてほしい。

 政府は原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、30年の電源構成で原発の比率を20~22%とすることを目指している。だが実際は、原発事故後に福島第1原発のほか全国で8原発15基の廃炉が決まった。この中には女川1号機も含まれる。原発の運転期間が40年と定められ、延長するには巨額の安全対策工事費が掛かるためだ。

 原発比率を20~22%とするには30基程度の再稼働が必要だ。エネルギー資源のほとんどを海外からの輸入に頼る日本では、原子力を含む多様な資源でエネルギーを安定的に供給することが求められる。政府は原発の新増設や建て替えを進めていかなければならない。

 温暖化対策での活用を

 発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない原発は、地球温暖化対策にも活用できる。再稼働を進めていくには、女川原発の成功体験を積極的に伝え、多くの国民に知ってもらうことも重要だと言える。