水陸機動団 米海兵隊との連携強化を
陸上自衛隊の離島防衛専門部隊「水陸機動団」が在沖縄米海兵隊と沖縄では初めての合同訓練を、金武町の米軍訓練場(ブルービーチ)で行った。
中国の離島侵攻に備え、水機団と米海兵隊との連携強化が求められる。
中国念頭に合同訓練
合同訓練には、陸自60人、米軍2500人が参加。陸自隊員が偵察用ボートと共に米艦艇に乗艦し、船から出動、収容、上陸を訓練した。東シナ海などで海洋進出を強める中国を念頭に置いたものだ。
水機団は2018年3月に創設された。水陸両用作戦を担う部隊として、拠点を長崎県佐世保市にある相浦駐屯地に設置。2個の連隊のほか、後方支援、通信、偵察など2100人態勢を組む。
さらに、3個目の連隊を相浦以外につくる計画が決まっている。夏までに配置先を選定し、21年度予算案に新設経費を計上する方向で調整が進められている。海に面した訓練場がある北海道の陸自駐屯地への新設を検討している。3個目の連隊新設は周辺国への抑止効果を高めるためにも有効である。
もっとも日本の防衛の焦点は近年、中国による離島への攻撃に備えるために西部方面に拡大している。南西諸島有事での即応性を重視すれば、新しい連隊は沖縄本島に置いてもおかしくない。沖縄本島をめぐっては多くの米軍基地を抱える地元から政府への反発があるため、調整は簡単ではないが、検討に値する案であることは確かだ。
中国では新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が大きな問題となっている。しかし、こうした状況の中でも沖縄県・尖閣諸島周辺での中国公船の活動が収まる兆しは見えない。今月も既に領海への侵入を2回行っている。警戒を緩めることはできない。
水機団は米海兵隊と同じ水陸両用車AAV7、垂直離着陸輸送機V22オスプレイを装備することから、内外メディアは「日本版海兵隊」と表現している。災害から有事まであらゆる事態にいち早く駆け付ける米海兵隊のような能力を持つには、多くの時間と予算も必要となる。日本としては水機団の効果的運用に向け、着実に環境を整えていく必要がある。
日本を取り巻く安全保障環境が厳しくなる中、離島防衛の重要性は増していると言えよう。島嶼(とうしょ)部への攻撃をはじめとする各種事態に対応するには、適切な地域で所要部隊が平素から常時継続的に活動し、状況に応じた展開を行うことが求められる。平時からの継続的な機動は抑止力になる。
共同対処能力の向上を
水機団は多国間演習のみならず米海兵隊との2国間訓練の機会が増えると思われる。水機団と米海兵隊は現在、米カリフォルニア州の海兵隊基地キャンプ・ペンドルトンでも離島奪還演習を行っている。
自衛隊との連携が強化されれば、米軍がインド太平洋地域における危機に対して、より迅速かつ効果的に対処することが可能となる。日米同盟の下、共同対処能力を向上させなければならない。