WHO会議 台湾参加は防疫のため当然だ


 世界保健機関(WHO)は肺炎を引き起こす新型コロナウイルス対策のため国際会議をジュネーブで開き、同ウイルスによる肺炎の名称を「COVID-19」と決めた。中国の反対でWHOに加盟できない台湾もオンラインや電話で会議に参加したが、疾病から人を守る保健や医療は普遍的な人道主義に立つべきで今後も台湾の参加を認めていくべきだ。

 1月緊急会合に招かれず

 中国湖北省武漢市を中心に感染拡大した新型コロナウイルスは中国で約4万5000人の感染者、1000人を超える死者を出しているほか、周辺地域をはじめ世界に拡散している。

 湖北省共産党委員会は、対処が後手に回ったことに対し省衛生健康委員会の張晋・党組書記と劉英姿主任を免職した。新型肺炎は昨年12月1日に確認されたが、重症急性呼吸器症候群(SARS)のようになりかねないと昨年末にSNSで警鐘を鳴らした医師に警察がデマを流すなと訓戒するなど、中国共産党は意図的に事態を小さなものにしようとしていた。

 しかし、感染の拡大には政治力も人為的な圧力も通用しない。同じことがWHOからの台湾排除にも当てはまる。中国が掲げる「一つの中国」原則により、台湾と国交のある国々を切り崩して台湾と断交させ、国交を結び、またWHOのような国際機関からの台湾排除に中国は執念を燃やしてきた。

 WHOは憲章で「人種、宗教、政治信条や経済的・社会的条件によって差別されることなく、最高水準の健康に恵まれることは、あらゆる人々にとっての基本的人権のひとつである」と定めている。政治によって無視や差別が許されてはならない。台湾は2003年のSARSの感染拡大の際にもWHOからの即時支援を受けることができなかった。

 台湾はWHO年次総会にも中国の反対でオブザーバー参加も認められず、1月22~23日の緊急会合にも招かれなかった。今回ようやく参加を認められたのは、新型肺炎の猛威が世界に広がり、米国や日本などが防疫に地理的な空白が生じることへの懸念を伝えたからだ。

 感染源の中国に近い台湾は、人口約2300万人で進んだ技術・工業力を持ち、観光名所もあることから中国とは厳しい政治対立の一方で人とモノの交流が多い。中国で猛威を振るう感染症の防疫が不可欠な地域だ。

 1月にWHOは緊急事態宣言を見送り、テドロス事務局長は当時の中国の対策に称賛を送った。中国への肩入れは明白だったと言えよう。現在、中国当局自体が対策の不備を認めて責任者を処分しているのであり、WHOの緊急事態宣言見送りに政治的な働き掛けがなかったか疑われる。

 医療、保健分野で協力を

 感染が広がったことに中国共産党の硬直した組織体質の弊害は明らかだが、国際的にも「一つの中国」という中国政府の原則が保健分野で優先され、台湾の人々が無視されるのは非人道的である。

 むしろWHOは台湾排除でなく、感染症対策はじめ医療、保健分野で今後も協力すべきだ。