対北情報共有 多国間連携で万全な抑止を
「ファイブ・アイズ」と呼ばれる米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど英語圏5カ国の機密情報共有の枠組みに日本、韓国、フランスの3カ国が新たに加わったことが分かった。北朝鮮による核やミサイルの動向を把握し、武力挑発を抑止するためのもので、今後の役割が期待される。
日米韓連携より幅広く
これまで5カ国の情報機関は世界に張り巡らせた通信傍受設備などの共同利用に向け結んだUKUSA協定を基に活動してきた。冷戦期にはソ連の軍事情報を取得し、現在は特に露骨な覇権主義を進める中国の脅威に備える必要があり、その重要性は変わらない。
その経験と実績は今回の枠組み拡大で、日米韓によるものが中心だった北朝鮮をめぐる情報共有にも生かされるだろう。より幅広い枠組みで対応すれば情報量は増え、精度も高まる。
北朝鮮は依然として北東アジアの安全保障にとって重大な脅威だ。米国との非核化交渉が行き詰まった北朝鮮が選択した道は、金正恩朝鮮労働党委員長が昨年末の党中央委員会総会で強調したごとく武力増強と自力による制裁克服だ。核・ミサイル開発路線を変える兆しは一向に見えない。
北朝鮮は近年、周辺国へのサイバー攻撃にも力を入れている。韓国社会を混乱させ、日本から仮想通貨を奪取しようとするなど周辺国を狙ったものが目立ち、その手法も年々巧妙になっている。
制裁の対象になっている原油や大量破壊兵器の材料などを北朝鮮が海上で瀬取りしていた疑いも浮上している。今回の対北情報共有の枠組みにはフランスも加わったが、フランスはこうした違法行為を取り締まるため昨年、海軍艦艇を警戒監視活動に投入している。
核・ミサイル開発やサイバー攻撃、さらに未解決の日本人拉致問題などへの対応が迫られる中、多国間で情報共有を進め、抑止力をより万全にする意味は大きい。
ただ、気掛かりなこともある。韓国・文在寅政権の北朝鮮に対する姿勢だ。昨年は日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を発表して日本のみならず国際社会を驚かせたが、最近は米国の反対にもかかわらず北朝鮮との経済協力を推し進める意向をにじませている。国際連携による対北抑止より国内政治向けの対北融和を重視しているようだ。
政権の意向を無視できない心理が強く働く韓国特有の事情を考えると、せっかく韓国で独自の北朝鮮情報が収集されても、今回の枠組みを通じ果たしてそれがどこまで有効活用されるだろうか。一抹の不安が残る。
情報共有は信頼関係の上に成り立つ。韓国が対北融和に傾き過ぎれば日米はじめ対北抑止を図る関係国から信頼を得るのが難しくなる。
欠かせない中国牽制
「ファイブ・アイズ」は今回の枠組みとは別に日本、ドイツ、フランスの3カ国と連携して中国のサイバー攻撃や宇宙での新たな脅威に関する情報共有も始めている。中国牽制(けんせい)の協力も欠かせない。