チバニアン 日本の存在感向上を喜びたい


 国際地質科学連合(IUGS)が約77万4000年前から約12万9000年前の地質時代を「チバニアン(千葉時代)」と正式に命名した。

 地質時代の名称に日本の地名が使われるのは初めてだ。学界における日本の存在感向上を喜びたい。

地層に地磁気逆転の痕跡

 46億年前の誕生から現代までの地球の歴史は、地層に含まれる岩石や微生物など化石の変遷に基づき、115の地質時代に区分されている。それぞれの時代はIUGSが統一の名称を決めるが、まだ名前のない時代もわずかに残っている。

 IUGSは今回、千葉県市原市の養老川沿いにある地層「千葉セクション」を、約77万年前の地質時代の境界を研究する上で最も優れた地点「国際標準模式地」に認定した。チバニアンの命名は、これに伴うものだ。

 この時代は、これまで暫定的に「中期更新世」と呼ばれていた。今後は、チバニアンが教科書や研究論文などで使われるようになる。

 岡田誠茨城大教授が率いる研究チームは2017年6月、千葉セクションでは地球の地磁気(N極・S極)が逆転した痕跡があらわになっており、更新世の前期と中期の境界が明確だとしてIUGSに提案していた。

 この時代をめぐっては、イタリアの2グループからも「イオニアン」と命名するよう申請があった。地質学は古い地層が多く残るヨーロッパで発展し、フランスからスイスに広がる山脈名から取った「ジュラ紀」のように欧州由来の名称が多く付けられてきた。

 ただ今回は、イタリア国内の地層で磁場のデータが不十分なことがネックとなった。地殻変動が激しい日本は古い地層が少ないため、岡田教授は「最後のチャンスをものにできた。感無量だ」と話した。

 チバニアンには現生人類「ホモ・サピエンス」がアフリカで出現した時期が含まれる。地層を調べれば、人間の活動が地球温暖化にどの程度影響を及ぼしているかも評価できるという。命名が地質学の研究の発展や、世界的な課題の克服に結び付くことを期待したい。

 チバニアンの名称決定で、千葉セクションには多くの人が訪れている。18年には国の天然記念物にも指定されており、市は見学しやすい環境の整備に努めてほしい。

 ここの地層は、かつて沖合の海底にあり、泥が堆積した後、地上に隆起した。砂や小石が交ざっておらず、岡田教授は「のっぺりしていて地層の面が全然見えない」という。

 しかし、泥の堆積ペースが速く、連続しているため、時間の経過を細かく調べることができる。これがIUGSに認定される要因の一つになった。

 岡田教授は「(見て)つまらない地層ほど面白いと思っていただきたい」と話している。多くの人が地質学に関心を持てるよう、研究成果を分かりやすく発信してほしい。

研究者育成につなげたい

 チバニアンの命名は子供たちに大きな夢を与えるものだ。次世代の研究者の育成にもつなげていきたい。