海岸漂着物対策 浜美化活動を学校教育に
官民の認識のズレ
海に囲まれ、四季の変化に富み、自然が豊かで美しいと賞賛される北の大地・北海道。近年、海外からの観光客も増えて国際的に知名度が上がりつつある。
ところが、一歩、海岸に足を運ぶと至る所に漂着物が打ち寄せられて、景観を損なっているのが実情だ。例えば、日本海に面する石狩市厚田の「夕陽の丘」にある展望台に立つと、沈む夕陽が大海原に映え、雄大でしかもオレンジ色に染まった海面が美しさを感じさせる。その一方で、その丘の上から真下の海岸線を覗き込むと大量の漂着物が打ち寄せられており、それまでの感動を半減させてしまうのだ。
展望台をきれいに保つなら、真下の海岸線のゴミも除去すべきだと思うのだが、これについて地元の石狩市は「そこまでは手が回りません」(同市観光協会)とお手上げ状態の様子。確かに、一度拾っても、波が時化る度にゴミが大量に打ち寄せられるのでは、自治体も予算がつかない、ということになる。近年、海岸のゴミ拾いに関しては各自治体の町内会やボランティア団体による美化活動が増えているというが、依然として海岸漂着物に頭を悩ませている自治体は多い。
そうした中で政府・環境省は2009年7月に「美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境の保全に係わる海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律」(海岸漂着物処理推進法)という長ったらしい法律を制定した。この法律の要点を挙げると四つほどある。
すなわち、①海岸漂着物等の処理に係わる海岸管理者の責任を明確化する②海岸漂着物等の発生の効果的な抑制を促すための国、地方公共団体、事業団体、国民などの役割分担と連携の確保する③国外からの海岸漂着物等が地域の環境保全を害している時は外務大臣が関係行政機関と連携して外交上適切に対応する④政府は、国外及び他の地方公共団体から流失した大量の海岸漂着物の処理に要する経費については特別の配慮をする―などとなっている。
同法の成立は、これまで放置された海岸漂着物問題に対して大きな一歩を踏み出したともいえる。海岸の漂着物対策に処理系統の必要性をうたったのは意義深い。また近年、韓国やロシアなどから日本海側の海岸に薬品の入ったポリタンクなどが漂着するケースが目立ち、こうした事態に対して国同士の連携をとることは極めて重要なことである。北海道では、その翌年1月には市町村や自治体の外郭団体、ボランティア団体を集めて「北海道海岸漂着物対策推進協議会」なるものを発足させた。
ただ、同協議会で話し合われた内容をみると、自治体と民間レベルでかなりのズレがあったという。一つは、同協議会が当初、3年間の期限付きのものであったこと。また、自治体の多くが海岸の流木対策など大型の漂着物対策を望んだのに対し、空き缶やプラスチックといった小型の漂着物を回収してきた民間ボランティア団体としては、議論に参画しにくい面があったという。3年を経過し、同協議会は名前を残して存続させているが、海岸漂着物対策が、同協議会の発足によって画期的に改善され成果が上がったとは言い難い。
素晴らしい教材
ここで海岸漂着物対策に関して、学校教育に海岸の美化活動を積極的に取り入れることを提言したい。海岸線を持たない市町村の学校であっても浜美化活動を行うべきである。森や河川は海につながっており、海岸を美化することは自分たちの街をきれいにすることにつながるからである。浜辺は海と陸をつなぐ大事な場所である。浜辺をきれいにすることは自然を愛することにつながる。そういう意味では海岸の美化活動は素晴らしい教育材料を提供しているのである。