ISのサイバージハード 政府、法執行機関、企業が連携を
パワフルなテロ戦略に
過激派組織IS(以下IS)の国家樹立宣言(2014年6月29日)から1年半以上が経過した。ISによるテロ攻撃は引き続き今年のグローバルリスクに挙げられている。
現在、国際世論に大きな影響を与えているのは、まさにISの持つパワフルなイメージにある。そのイメージを創り出して来たのは、21世紀のテクノロジーツールとサイバー空間を利用する“サイバージハード”と呼ばれる集団だ。信奉者たちによってイスラム教の敵として選別された人たちに対し、ISのテロ活動の概念を宣伝している。
従来からISのソーシャルメディアを活用した戦略は注目を浴びている。140文字以内の短文の投稿を、ウェブ上の共有情報サービスを利用することで、強力な支持をオンライン上で得るだけではなく、誇張表現を用い、メッセージの内容を自分たちで管理している。ブルッキングス研究所が昨年出した報告書によるとISの支持者たちが使用したツィッター(Twitter)社のアカウント数は4万6000に上るという。
サイバージハードはまさにこのIS戦略の中心的な役割を演じており、ISが強みとするサイバーパワーの源となっている。
彼らはオンライン企業等のプラットフォームを利用し、フォロアーたちを魅了し、信奉する思想を広め、テロ攻撃を組織している。組織的な技術能力に加え、ISを他のイスラム原理主義テロ組織から変容させるための主要なイノベーションは成功したと言って良いだろう。今や、西側諸国やイスラム世界においても、いわばグローバルなブランド名としてしばしば語られるようになった。
米国政府は企業と協力して何とかISの壊滅に取り組むも、これと言った決め手を見出せず、いたちごっこのままであった。
しかし、ここに来て政府の動きに前進が見られる。
昨年末にオバマ大統領は、ハイテク企業と法執行機関それぞれの責任者たちにテロリストがテクノロジー法の網を逃れることのないよう要求するとの声明を出した。それに伴い、主要なハイテク企業とインターネット企業のCEOたちが一同に介し、オンライン上で人を過激的思想を持つよう洗脳し、テロ活動へと駆り立てる現状を阻止するための方策を取るための議論を行った。
Twitter社はこの度、新たなISに対する指針を掲げている。昨年半ば頃から取り組んでいる方策だ。今までのところ、主としてテロリスト集団に関連する12万5000ものアカウントを閉じることができたと成果を発表した。
サイバー規範も整わない現状で国家レベルでの対応は行き詰まりを見せているが、この度の政府、法執行機関とハイテク企業の双方向での連携が良きトリガーになり、新たな歯止めとなることも期待できる。
シリア内戦の解決必要
ただ、依然としてISの壊滅、各国に拡大するISの勢いを止めるには根本的な問題解決には至らない。なぜならば、シリア内戦を停止するという外交的な解決策こそが必要だからだ。例えば、ISの脅威に怯えるシリア難民の急増で欧州の人道主義が揺らいでいるように、この問題は拡散しつつある。サイバージハードには教育水準の高い人材が多く存在しており、今後もより強力な各国の連携を軸とした政府レベルで取り組むことが喫緊の課題である。
サイバー戦争は従来の21世紀の対立にかかる交戦規定(通称ROE)とは異なる。皮肉にも自分たちが考案したネットワークで送電網、原子力発電所、飛行機、車や金融インフラ全体がつながれば、ハッカーが侵入できる。
政府とインテリジェンス機関が協同し、未来のサイバー戦争に反撃するために粛々と取り組むことが求められる。





