薬物問題に自己規律を 合法化の波を知識で防げ
闇に潜る危険ドラッグ
先月、厚生労働省は、全国的に危険ドラッグ販売店がなくなったと公式に発表した。2012年3月末には全国29都道府県にて危険ドラッグ販売の389業者が存在したことを考えると、このゼロという状態が達成されたことは本当に素晴らしいことと思う。
しかし楽観ばかりはしていられない。危険ドラッグ蔓延(まんえん)が日本に残した爪痕は看過できない。危険ドラッグが原因の薬物依存に苦しむ人々の数は、最近覚せい剤や大麻などの違法薬物を超えたという報告もある。さらに規制や取り締まり強化などにより、以前のように堂々とした危険ドラッグ販売は見られなくなったものの、売人は顧客リストと共に地下に潜り、違法薬物と同様、密売が続いている。
8月10日現在、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(旧薬事法)」にて指定された薬物は、2310種類ある。これに加え、告示禁止物品(広域禁止物品)と呼ばれる、生産や流通を広域的に規制する必要がある物品が85製品。さらに人体に対して有害性が認められるとして麻薬に指定されたものは170種類。合計2500前後の化学物質が禁止薬物として日本で指定されており、この数は継続的に増え続けている。ということは、精神毒性が確認される新しい有害物質も日々生まれているということだ。
危険ドラッグ以外では、処方薬乱用の問題もある。乱用目的で大量に出回っている睡眠導入剤や、依存への入り口となりやすい抗不安薬などがあり、これらは深刻な依存を引き起こすとして社会問題化している。
また、風邪薬や解熱鎮痛薬などの一般用医薬品(市販薬)による急性中毒も、10代の間で近年増加しているという報告もある。処方薬や一般用医薬品といっても、違法薬物と同様に依存や中毒の原因と充分なりうるのだ。
さらに大麻については、世界的にも非犯罪化の方向に向かっている。米国では現在4州にて娯楽用大麻が合法化されているが、大麻を宣伝するCMなども制作され、「アルコールより安全」などとしてあたかも身体にいいものであるかのように扱われている。またヨーロッパの各国やオーストラリアにおいても大麻の非犯罪化が着々と進んでおり、南米のウルグアイでは2013年に国をあげて大麻販売が合法となった。
薬物の真実を広めよう
このような中、「法律」を超えた「自己規律」を一人一人が持つ時代が来たといえる。
その「自己規律」は、一人一人が持つ知識によるものであり、いかに薬物の「正しい知識」=「真実」を持つかが鍵となる。薬物はなぜ使用してはいけないのか、どのような有害性があるのか、使用によって個人の人生、家族、地域社会がどのように破壊されてしまうのか。教育・啓発によってしっかりと薬物の正しい情報を伝える必要がある。
薬物について少しでも良いことを耳にしたら、それは誰によるものか、どのような意図で広められているものなのかをしっかりと分析することも時には必要だ。ご参考までに当協会の支援をしているサイエントロジー教会が先日、新宿区百人町にオープンし、その1階に情報センターが設置された。このセンターでは、薬物の元常用者による体験談のドキュメンタリーや教育・啓発用の公共サービス広告の映像が年中無休で視聴できるので、ここに足を運び、知るのもいいだろう。
今後日本にも海外から薬物合法化の波が押し寄せてくると予想されるが、その波にのまれないよう知識による防波堤を一人一人がしっかりと築き、薬物の真実を広めることが今こそ重要である。