東京パラリンピック 前例のない大会に
後世が見る真の意義
東京パラリンピックも、8日に閉幕した五輪に続き、新型コロナウイルス禍を避けられない。感染すれば重症化しかねない疾患を抱える選手も参加するスポーツの祭典にとっては、前例のない開幕となる。
世界に12億人いるとされる障害者が脚光を浴びる機会だからこそ、「共生社会」「多様性」などの意義が語られる。ただ、目下の感染症に日常のみならず、生命も奪われかねない苦難は1年延期の代償を払ってもなお深刻になり、大会開催に国民の幅広い共感や賛同を得るのが難しい状況にある。
57年前、最初の東京パラリンピックが行われた。厚生省(現厚生労働省)などが企画制作し、東京都千代田区の戦傷病者史料館「しょうけい館」に残された記録映像に映る国内外の選手は、一様に病院でよく見る車いすに乗っていた。違うのは表情だ。
海外勢は朗らかで楽しそうに汗を流す姿が多かった。既に職業や自動車を持つ人が目立つことも紹介されたが、一方の日本勢について、ナレーションが「その逆」と表現した。主に国内療養所の入所者や病院の入院患者を集めた日本と、「社会人」である海外選手との違いが鮮明になった。そのことが、後の政策改善につながったと言える。
記録映像は大会の理念を一切伝えていない。後世に残る本当の意義は、開催した後に見えてくる。