宜野湾市議会、定例会議で辺野古移設促進を可決
普天間返還日米合意から23年、初の「辺野古」盛り込み
宜野湾市議会(上地安之議長、定数26)は9月27日の9月定例会最終本会議で、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設促進を求める意見書を賛成多数で可決した。同議会はこれまで、普天間飛行場の早期返還を求める決議や意見書を可決してきたが、辺野古への移設促進を明記したのは初めてだ。(沖縄支局・豊田 剛)
松川正則宜野湾市長も移設を「容認せざるを得ない」と発言
27日の宜野湾市議会は、始まる午前10時には約50人分の傍聴席が満席となり、市民の高い関心をうかがわせた。与野党議員が辺野古移設の賛成と反対の立場からそれぞれ発言すると、傍聴席からは拍手ややじが入り混じった。
自民党系の辺野古移設を求める与党案は賛成14、反対8で可決した。公明会派の3人は退場した。普天間飛行場の返還が盛り込まれた1996年の日米特別行動委員会(SACO)の最終報告以来、宜野湾市議会が移設先として「辺野古」と明記した意見書を可決したのは初めて。
表題は「普天間飛行場の危険性除去のための米軍基地キャンプ・シュワブ辺野古崎への移設促進を求める意見書」。宛先は、首相、知事、沖縄関係閣僚ら。宜野湾市民が基地被害に悩まされ続けていながら、「政府と県の議論は移設先のみに終始し、当事者である宜野湾市民が置き去りにされている」と指摘。「日米両政府が移設先は辺野古崎が唯一の解決策としている」ことを尊重すべきだとした。
翁長雄志知事(当時、故人)が辺野古埋め立てに必要な公有水面埋め立ての許可を撤回したため、危険性除去が放置されることは認められないという趣旨で、2万人超の市民が署名をしたことや、わずか3カ月の間に辺野古移設を求めて7万3491筆の署名が県内から集まったことにも触れている。
意見書では、①キャンプ・シュワブ(辺野古)への移設・統合の促進②普天間飛行場の危険性除去③日米両政府で普天間飛行場の運用停止時期を新たに定めること④県内の基地整理縮小を進めること――などを求めた。提案した呉屋等議員(絆輝クラブ)は、「当事者である市議会として意見書を提出し、普天間飛行場の危険性除去と一日も早い返還実現を求める」と説明した。
平安座武志議員(絆輝クラブ)は「キャンプ・シュワブへの移転・統合こそが現在、唯一の現実的な解決策であり、この事業を前に進めることが普天間飛行場の危険性除去・全面返還への最も早い方法だ」と強調。山城康弘議員(絆クラブ)は、「市民の生命と財産を守ることが最優先されるべきだ」と述べた。
一方、野党の玉城健一郎議員は、複数の選挙や辺野古埋め立ての是非を問う県民投票を通じて県民が何度も辺野古移設反対の民意を示してきたと指摘。「辺野古への移転は日本の民主主義への挑戦だ」と訴えた。
またこの日、野党は辺野古移設に反対する意見書を提案したが、賛成8、反対14、退席3となり、反対多数で否決された。
松川正則宜野湾市長は、議会の答弁で「容認せざるを得ない」と発言。実際に移設工事が進んでいることや、玉城デニー知事に移設の代替案を示す考えがないことを理由に挙げた。意見書採択を受け、松川氏は「市議会を挙げて可決されたということで、大変重く受け止めざるを得ない」と述べた。同市長は29日、河野太郎防衛相と会談し、辺野古移設を容認する考えを伝えた。
辺野古移設を促進する意見書はこれまで、八重瀬町、石垣市、宮古島市で採択されている。今後、保守系議員が過半数を占める市町村議会で可決される可能性がある。傍聴していた50代の女性は、「地元が声を上げたのは意義がある。これをきっかけに県内外で辺野古移設推進の動きが高まればいい」と話した。
辺野古移設について、政府に対し、沖縄県の民意を尊重するよう迫る玉城知事は、これまで、宜野湾市議会の決議について明確なコメントを出していない。
一方、移設受け入れ先である名護市議会ではその前日の26日、辺野古移設の中止と普天間基地の運用停止などを求める意見書が可決された。意見書では、県民の民意の尊重を求めた上で、問題解決のためには国民的な議論が必要だと指摘した。