那覇の名所、公設市場にお別れ
沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)
那覇市民の「台所」として親しまれた「第一牧志公設市場」が16日、老朽化による建て替えのため、現在の建物での営業を終了した。
市場は、那覇市の国際通りからアーケード街に入り、3分ほど歩くと右手にある。戦後の闇市が前身で1950年に開業し、72年に現在の鉄筋コンクリート3階建ての建物が完成した。その当時を知る80代の那覇市の女性は、最初の頃は日常の食品を買い求めに頻繁に出掛けていたという。
しかし、80年代から郊外型の大型スーパーの勢いに押され、地元客の足は遠のいた。そこで、観光客を呼び込む方針に転換。1階で精肉や鮮魚など新鮮な食材を扱い、2階では購入したものを調理してもらう方式にした。
近年は、食堂の利用客の大半が外国人で、従業員の多くも外国人だ。前出の女性は「地元の人々の割合が少なくなり、寂しくなった」と話す。
市場がクローズアップされるのは、旧正月や清明祭など主要行事の季節。この時ばかりは地元の買い物客でごった返す。重箱料理の食材を調達する際には欠かせない存在になっている。
15日と16日は、市場の最後を見ようと、多くの客が訪れた。スマホで写真を撮り、店員と会話をしながら名残を惜しんでいた。市場のシャッターが閉まった後、セレモニーで粟国(あぐに)智光組合長は「日本固有の文化的価値のある市場がなくなるのは寂しい」と話した。
市は建物の延命策も模索したが、度重なる台風の被害で限界になった。市場は来月、近くの仮建物で営業する。その間に現在の建物は一新され、2022年4月に同じ場所で再開する。再開後も客足を維持できるか不安の声も漏れるが、粟国氏は「若者にも店舗に入ってもらい、沖縄のオリジナリティーあふれる市場にしたい」と期待を語った。
(T)