普天間移設めぐりしのぎ削る 宜野湾市長選まであと1カ月
早期危険性を除去 佐喜真氏
辺野古移設に反対 志村氏
来年1月24日投開票の沖縄県宜野湾市長選まであと約1カ月となった。現職で自公が推す佐喜真淳氏と、翁長雄志知事を筆頭に革新陣営に支えられる志村恵一郎氏との一騎打ちとなる公算が大きい。最大の争点は市の中心部にある普天間飛行場の移設問題で、「一日も早い移設・返還」を求める佐喜真氏と「辺野古(名護市)移設を許さない」とする志村氏との違いが際立っている。(那覇支局・豊田 剛)
知事選自主投票の公明は佐喜真氏推薦
4年前の宜野湾市長選に勝利して26年半ぶりに革新から市長ポストを奪還した佐喜真氏は、「チェンジ宜野湾からチャンス宜野湾へ」を2期目のモットーに掲げる。就任以来、日本政府と仲井真弘多前知事との良好な関係が続き、革新市政で停滞していた経済を上向きに転じさせた。
自民党の茂木敏充選対委員長はすでに2回、宜野湾市を訪れ、組織の引き締めを図りつつ、昨年から続いている沖縄における保守連敗の流れを食い止めたい考えだ。
佐喜真氏は市の西側の埋め立て地に商業施設など多くの企業を誘致することに成功、約1200人の新規雇用が生まれた。東洋経済新報社が毎年実施する「東洋経済別冊都市データパック2014年版」では宜野湾市が成長力で全国1位に輝いた。2012年が12位、13年が5位と、就任以来、着実な成長を遂げて頂点に立ったことが分かる。
今年度の基地関係調整交付金は約3億円で、前市政から約4倍に拡大した。また、家計に占める子育て負担が大幅に減少した。給食費は就任後すぐ、半額助成を実施。医療費は未就学児の完全無料化を実現し、来年度からは小学生にまで拡大される。
宮崎政久衆院議員(自民党)は佐喜真氏について「東京に来て事務方のトップである官房長官、各省の大臣・副大臣・政務官らと交渉するときには鬼の形相で非常に厳しい交渉をする」と語り、地元の経済負担と基地負担の軽減のための精力的活動を高く評価した。
各公民館では今月、地域懇談会が開かれている。佐喜真氏を支える市議が企画するもので、「市長が市民と肌を合わせながら懇談することで、しっかり意思疎通ができている」と保守系市議は手応えを感じている様子。
昨年11月の知事選では公明党が自主投票を行ったため、同党が推薦するかどうかが注目されていた。公明党沖縄県本部は今月14日、佐喜真氏の推薦を決定した。19日には党本部から斉藤鉄夫選対委員長らが応援に駆け付け、「公明党も全力を挙げる」と述べた。
政策協定では普天間飛行場の移設先を問わず、「宜野湾市民の生命・財産を守ることを最優先し、固定化を絶対許さず、その危険性を除去すべく、一日も早い同飛行場の閉鎖、返還を強く求め、跡地利用に全力で取り組む」ことを確認した。
新人で元県職員、志村氏は翁長知事と歩調を合わせて選挙戦に臨む。「辺野古に新基地を作らせない」ことが現市長との違いと主張。「今回の選挙は昨年の知事選や衆院選で示された民意を確かなものと証明することだ」と辺野古移設反対を前面に出す。
政策発表の場では「翁長雄志知事を支えるスタンスは不変」と述べたように、基地政策は1年前の知事選における翁長氏の公約と瓜(うり)二つだ。同飛行場の危険性除去方策については「普天間の5年以内の運用停止、オスプレイの配備撤回を強く求める」と述べたが、その具体的方策には触れていない。
革新陣営の人選は難航した。元市長の伊波洋一氏は出馬に意欲を示していたとされるが、革新色が強い人物では勝てないとの判断で、翁長氏が自ら出馬を要請したという。元自民党県連会長だった父親を持つ志村氏もかつて保守系だった翁長氏のように保守系の票を切り崩しやすいと判断したようだ。
9日に行われた決起大会では、「宜野湾市長選は安倍政権との戦いでもある」という言葉が多くの弁士から飛び出す一方、宜野湾市のまちづくりや雇用、福祉に関する発言はほとんどなかった。志村陣営サイドは「翁長知事」対「日本国政府」の代理戦争の構図に持ち込もうとしていることがよく分かる。
日米両政府が合意した普天間飛行場の一部返還や同飛行場返還跡地のディズニーリゾート誘致計画に対しては「パフォーマンス」との批判を繰り返している。
鍵を握りそうなのが第3勢力である中道派だ。おおさか維新の会の下地幹郎衆院議員と近い関係にある呉屋宏県議は態度を明確にしていない。同氏の後援会によると、2000票は動かせる力はあるが、「表立ってどちらかを応援するということはない」と自主投票にする見通しだ。
前回4年前の選挙では革新系の伊波洋一氏との得票差は900票差ほどしかなかった。両陣営とも、「投票箱を開けるまで、どうなるか分からない」大接戦という認識だ。