沖縄を現代版「ジパング」に!
海底資源開発 那覇でシンポジウム
魅力ある新産業群根付かせよ
東シナ海の海底に伸びる沖縄トラフには銅・鉛・亜鉛など豊富な海底資源を含む熱水鉱床があることが分かっている。こうした海底資源の将来性について考えるシンポジウムが11月29日、那覇市で開かれた。参加者は海洋資源開発が将来的に沖縄の新産業を担うべきだとの見方で一致した。(那覇支局・豊田 剛)
国立の総合的海洋博物館創設を提案/研究と県民の夢育む
海洋資源に関する国内法制度や関連産業の整備は始まったばかりだ。平成25年4月に閣議決定された「海洋基本計画」によって、海底資源の研究・開発は国家プロジェクトとして位置付けられ、海底資源開発はスタート段階に入った。沖縄近海の海底資源の存在は、沖縄経済の飛躍をもたらす巨大なチャンスと認識されつつある。
一般社団法人沖縄海底資源産業開発機構(OSR)が主催したシンポジウムには、海底資源に携わる研究者、産業界、政府の関係者が一堂に集い、海底資源開発に関連する技術開発、産業基盤創生、法整備基盤の整備などの研究成果や課題を発表した。
冒頭、主催者を代表してOSRの新垣盛義理事長が「現在、我が国を取り巻く環境は不安定な状況が続き、国外との間で相互理解を深めて解決しなければならない問題がある」と中国による領海侵犯に警戒心を示した。その上で、「海底資源は新たな雇用創出、人材育成、地域活性化の千載一遇のチャンス。無から有が生まれ、県益へ、さらに、国益につながるものだ。将来的に沖縄モデルを構築したい」と意欲を見せた。
引き続き、政治、産業、研究の分野から4氏が登壇した。
西田新一・佐賀大学名誉教授は、①技術力の不足②研究開発型の就職先の不足③失業率の高さ―という県産業が抱える三つの問題を挙げた。大学卒業生の大半は本土の企業に就職している現実にも触れた上で、根本問題は“技術力”に起因すると指摘した。
西田氏は、金属用食器産業の盛んな新潟県燕市・三条市、銅鋳物で有名な富山県高岡市、眼鏡の国内生産量の9割を占める福井県鯖江市をモデルに、「魅力のある産業群の育成・振興を図ることが望ましい」とした上で、「海底資源を利活用することを通じて魅力ある新産業を根付かせれば、沖縄県が現代版『ジパング』になることも夢ではない」と述べた。
秋野公造参院議員(公明)は、国会で海洋資源開発について最も熱心な議員の一人だ。海洋研究開発機構(JAMSTEC)保有で地下7000㍍を掘削できる「ちきゅう」号と、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)保有の新型資源探査船「白嶺」号を沖縄で積極的に活用するよう求めつつ、調査の進捗状況も確認するよう国会で要請を続けている。秋野氏はまた「熱水鉱床がある沖縄こそ日本経済を牽引(けんいん)する原動として日本をリードすべきだ」と指摘した。
JAMSTECが平成23年より本格的に海底資源研究を開始していることについて木川栄一同センター長は、昨年から経産省、国交省、総務省、環境省、民間企業、大学と連携して海底資源調査産業の創出を目指す事業を開始したと報告した。
また、JOGMECの廣川満哉審議役は、平成29年度に伊是名海穴で世界初となる鉱石を掘る「採鉱」と掘った鉱石を海底から引き揚げる「揚鉱」を組み合わせたパイロット試験を行うことに期待を示した。さらに、平成30年代後半以降に民間企業が参画する商業化を目指したプロジェクトを開始する計画を提示した。
パネルディスカッションでは、「海底資源産業開発による地域活性化の可能性」と「有効利活用に係る地域の課題」を議題とし4氏に加え、花城大輔県議と東海大学海洋学部の山田吉彦教授が参加した。
花城氏は、「沖縄県では大型コンベンション施設(MICE)、那覇空港第2滑走路の建設など多くの資本が投下されるが、経済成長と県民の生活がリンクされていない」と指摘した上で、「県民が夢を描けるような新しい産業が必要」とし、海洋資源開発の可能性に期待を示した。
山田氏は、海洋資源都市・沖縄のイメージをつくって「誇れる沖縄」にすることが可能だと指摘する。「新産業はどこからか降ってくるものではなく創り出すもの」で、まず県民が海底資源産業を望む土壌をつくることが大切だと訴えた。海底資源の夢を膨らませるため、研究施設を備えた国立の総合的海洋博物館を造ることを提案した。