名護市に不況の風、基地再編交付金2011年から停止
日本ハムはキャンプ撤退へ
米軍普天間飛行場(宜野湾(ぎのわん)市)の代替施設建設予定地の辺野古(へのこ)が所在する名護市の稲嶺進市長は移設に強く反対。米軍再編特措法による基地再編交付金が2011年から停止されていることについて「基地に頼らない発展」を公約に掲げているが、プロ野球キャンプの事実上の撤退が決まるなど、市の経済には暗雲が漂っている。(那覇支局・豊田 剛)
USJ誘致に不熱心な稲嶺市長
島袋前市長はトップセールス説く
普天間飛行場の名護市辺野古沖への移設について「海にも陸にも基地を造らせない」と主張する稲嶺市長のもと、名護市を取り巻く環境は厳しさを増している。
昨年、大阪のテーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が沖縄に進出するというニュースが流れた。当初、名護市の自然動植物公園「ネオパーク」とその周辺への進出が期待されていたが、今年に入って県内屈指の観光施設の美ら海水族館がある本部町の海洋博公園が最有力視されるようになった。菅(すが)義偉(よしひで)官房長官は今月12日、海洋博公園を視察し、USJの誘致について「沖縄の振興策の中で、できることはすべて国としては支援していきたい」と述べた。
これについて岸本直也市議は、「稲嶺市長は誘致運動をしていない。本来ならば市長が中央に出向いて要請してほしかった」と述べた。
さらに今年4月、プロ野球の日本ハム・ファイターズのキャンプ撤退が明確になり、名護市に衝撃が走った。
これは球場を中心としたキャンプ施設の老朽化が原因だ。日本ハムは1978年、他球団に先立って沖縄キャンプをスタート。大谷翔平投手ら多くのスター選手を擁する人気球団だけに、大幅な経済的損失が予想される。
来春は米アリゾナ州で1次キャンプを実施することが決まり、2月の最終週だけは名護で行う可能性が残されているが事実上の撤退だ。さらに、これまで2軍が使用している国頭村(くにがみそん)の球場および宿泊施設の方が充実しているため、1軍がまったく名護でキャンプをしない可能性も残されている。
島袋吉和市長時代、海岸を埋め立てて総合運動公園を建設する構想が提案されたが、過半数を占めていた当時の革新系野党が反対した。さらに、施設に関する再三再四にわたる球団側の要請があったにもかかわらず、ドーム型屋内練習場を建設するだけにとどまった。
名護市挙げての観戦ツアーが毎年開かれているが、稲嶺市長は今年、翁長雄志(おながたけし)知事のハワイ訪問に同行したため欠席。キャンプに残るよう陳情もしていない。
こうした中、島袋前市長の地元の数久田(すくた)区でダムの建設が現在行われている。平成16年から島袋氏が地元の活性化とインフラ整備のために働きかけていたもの。
「100%防衛予算で建設できるというのは異例中の異例」と北部振興協議会会長も務める島袋氏は話す。これについては、前市政の業績をほとんど認めようとしない稲嶺市長でさえも島袋氏の功績を公然と評価したという。
稲嶺市長など反基地勢力は北部振興策はハコモノばかりに費やされたと批判していることについて島袋氏は「振興策に対する検証が弱かった」と述べた上で、「金融特区の効果で1000人以上の雇用が生まれ、実働している」と反論。「市長の仕事はリーダーシップを発揮して企業誘致・トップセールスをすること」とし、翁長知事と同様、反基地に重点を置く行政の在り方に疑問を投げかけた。「このままでは名護の不況が進み、北部で埋没しかねない」と危機感をあらわにした。
中谷元防衛相は15日、名護市を訪問し、名護市長との会談に先だち、名護を除く沖縄北部の6町村長と会談した。このことからも、名護抜きでの北部振興が現実味を帯びてきていることが分かる。
中谷氏はまた、名護市の辺野古とそれに隣接する豊原の区長、島袋氏ほか名護市の有力者らとも会談した。島袋氏によると、防衛省は1カ月の移設準備作業の中断が終われば、速やかに作業を開始すると確認したという。