辺野古埋め立て承認の撤回を「検討」

翁長雄志知事、県政運営方針で改めて主張

2000人の抗議集会、知事は不参加

 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に関して、翁長雄志(おながたけし)知事は19日、県議会2月定例会の県政運営方針で改めて辺野古移設反対を主張した。同知事による工事中断の申し入れもむなしく、沖縄防衛局による移設のための海底ボーリング調査の準備作業が着々と進められている。22日には2000人規模の移設阻止のための集会が開かれたが、知事と反対派のリーダーの姿はなかった。(那覇支局・豊田 剛)

反対派リーダー格を逮捕

違法テント撤退の行政指導も

辺野古埋め立て承認の撤回を「検討」

翁長雄志知事

 翁長雄志知事は19日、県議会2月定例会で県政運営方針を行い、第三者委員会の報告を踏まえ、「埋め立て承認の取り消し、撤回を検討する」と述べた。

 辺野古沖の埋め立て承認の取り消し・撤回に向けた有識者の第三者委員会は環境問題に詳しい専門家や弁護士6人で構成される。人選の遅れなどで設置が半月ほど遅れ、今月6日に初会合を開催、7月に報告書を翁長氏に提出する方針だ。

 翁長知事はまた、沖縄防衛局が県の許可区域外でサンゴ礁を破壊している可能性が高いとして一部作業の停止を指示したものの、政府は「県の許可は不要」として作業を進める意向を示した。辺野古沖では3月にも海上調査が始まり、7月には深い海域での護岸に使うコンクリートの製造にも着手する見通し。

 翁長氏は昨年11月の知事選の時と同様、埋め立て承認の撤回・取り消しの「検討」という慎重な表現に終始し、政府に対しても移設阻止の決意を明言していない。こうした知事の煮え切らない態度がキャンプ・シュワブのゲート前での抗議活動を過激にしているとの見方が強い。

辺野古埋め立て承認の撤回を「検討」

名護市辺野古の国道の歩道に抗議活動のために張られた違法テントに撤去要請が出された=22日、キャンプ・シュワブ・ゲート前

 22日の午前には、移設反対集会を前に、沖縄の反基地運動を束ねる沖縄平和センターの山城博治議長ら2人が無許可で米軍敷地内に入った疑いで米軍に連行され、沖縄県警に日米地位協定に伴う刑事特別法違反容疑で逮捕された。集会には県選出の革新系国会議員5人が参加したが、知事は参加を見送った。

 翁長知事不参加に対して「なんで知事が来ないんだ」と集会参加者の中から罵声が飛んだ。

 これより先19日には、沖縄防衛局と沖縄総合事務局は、ゲート前の歩道を不法占拠する反基地活動家に対し、26日を期限にブルーシート、横断幕、立て看板などの工作物を撤去するよう文書で指導した。

辺野古埋め立て承認の撤回を「検討」

名護市辺野古の緑地帯や変電所前には毎日、活動家が違法駐車している=22日、キャンプ・シュワブ・ゲート近く

 ゲート前の国道329号の歩道での座り込み抗議活動は昨年7月から始まって半年以上も公道を不法占拠しているが、撤退の行政指導が出されたのは初めて。22日現在はテントが約30㍍にわたって立ち並び、歩道幅の約3分の2を占拠。支柱のパイプはキャンプ・シュワブのフェンスにくくり付けられ、基地内にはみ出している。中には寝袋で夜を徹する人もおり、火気の使用も確認されている。

 道路を管轄する北部国道事務所には辺野古地域の住民らから「歩道を占拠している」「違法駐車を取り締まってほしい」「ゲート前の道路に飛び出し、交通妨害になっている」という苦情が絶えないという。

 地元の男性住民は匿名を条件に、「辺野古の商工業界は迷惑駐車のせいで、営業に支障を来している。もう我慢の限界だ」と不満を漏らした。22日の2000人規模の集会でも集落内は参加者のものとみられる路上駐車であふれ、この男性は困惑を隠せなかった。

 一方、尖閣諸島を有する石垣市の保守系市議4人が18日、警備に当たる海上保安官を激励しようとゲート前を訪れた。100人余の反対派が4人を取り囲み演説を妨害、「海保ガンバレ」と書かれたのぼり旗を折った。市議らは「夜道を歩けないよ、あんたの奥さんも子供もな」と脅迫され、メガホンで頭を殴られるなどの被害を受けたもようだ。

 激励に参加した砥板(といた)芳行市議は、「海上保安庁石垣航空基地がこれまで急患航空搬送で救った命は2800人余で、住民の命、海の安心安全、国境海域警備に対して感謝したかった」と話す一方で、「辺野古での公道の不法占拠や数々の違法行為、暴力行為を『反基地無罪』にしてはいけない」と訴えた。