龍柱建設、那覇市議会で追及
自民議員「住民に説明不十分」
那覇市が大型旅客船バースに隣接する若狭海浜公園に沖縄振興一括交付金を使って龍柱を建設することに反対する声が県内外から強まっている。こうした中、那覇市議会の12月定例会の代表質問で久高友弘議員(自民)が龍柱建設にみる中国の野望について言及しながら、「十分な住民説明もないまま建設を進めることは那覇市民の理解を得られない」と強調した。(那覇支局・豊田 剛)
工期遅れ、予算見積もり杜撰
振興費削減、交付金返還も
沖縄問題研究関係者によると、中国には「琉球国復国運動基本臨時綱領」と「琉球臨時憲法9条」と称する草稿が存在する。「綱領」は、「中国民間保釣連合会」という団体のウェブサイトに全文が掲載されており、1条には、琉球は古来より独立する主権国家であり「琉球の人民は日本の琉球群島に対する植民地統治を承認しない」と明記されている。
同憲法の第9条には「琉球共和国は独立を堅持するために十分な軍事力を持つ」とある。二つの文書は、中国が沖縄の独立を画策している根拠となっている。また、中国共産党幹部で中国内で琉球独立運動の捏造(ねつぞう)報道を積極的に行っているとみられる商務部研究員日本問題専門家の唐淳風氏はかつて、中国紙に「琉球は私たちの血を分けた同胞であり、中国が支持すれば5年から10年で独立できる」と寄稿している。
こうした中、那覇市議会の久高議員は一般質問の冒頭、「中国の野望が明確な時期に、(那覇市若狭・久米地区で)福州園の無料入場に加え、至聖(しせい)廟(びょう)(孔子廟)と龍柱の建設が行われることに心底恐怖を覚えている市民・県民・国民がいることは忘れてはならない」と主張した。
久高議員が「那覇福州友好都市交流シンボルづくり事業」として龍柱が建設されるに当たって、「地域住民への説明及び意見交換を行ったのか」と尋ねると、新垣昌秀建設管理部長は「地域の自治会長に説明した」と答弁。これに対し久高議員は、「たった1回、7人の自治会長を集めただけで市民の意見は集約されたと思うのか」と憤った。
「龍柱の建設は那覇市だけの問題ではない。安全保障に関わる国とアジア地域の問題でもある」と那覇市在住の50代の男性は怒りを隠せない。市外・県外からも那覇市に対して反対意見が続々と寄せられている。大阪の市民団体はこのほど、1万4000人分の署名を那覇市に提出。インターネットでも10月末時点で9000筆の署名が集まっている。
安全保障問題に加え、市の予算の使い方に対する不満も噴出している。龍柱は、一括交付金を活用し、総事業費は2億6700万円。施工計画書によると、予算の内訳は、実施設計業務委託費1428万円、中国での石材調達や彫刻、運搬などの整備工事費が1億2130万円、輸送された石材の設置や組み立て工事費1億1349万円。モニュメント製作に関わる施工監理業務委託費は1791万円となっている。
「石材については、石材彫刻に適した強度を有する花崗(かこう)岩は沖縄県内では産出されないことや、友好都市締結10周年を記念して建設された福州園においても東屋(あずまや)や石像、石柱などについて中国の石材を用いた経緯もあり、今回も友好交流の一環として中国福建省の石材を使用し龍柱を制作することとした」と施工計画書で説明している。
中国に工事発注することへの批判について新垣部長は、発注を比較検討した結果、「中国産の石材を中国で加工する場合は1億1千万円、中国産の石材を国内で加工する場合は3億2千万円、国内産の石材を国内で加工する場合は9億8千万円かかり、最も安価な中国産の石材を中国で加工する方法を選んだ」と説明した。
県内のある石材関係者は、「国内でこんな高額になるはずがなく、見積もりがいいかげんだ」と呆れている。
当初計画では12月25日には完成予定だったが、現在は建設のための基礎工事が行われている段階で、資材はまだ現場に到着していない。工事の遅れについても久高議員は厳しく追及した。これに対して新垣部長は「天候不良で現地の資材調達などが遅れるなど不測の事態が生じた」と説明した。工期が3月末まで延びたことにより、さらに予算が膨らむ懸念も生じている。
「住みよい那覇市をつくる会」(金城テル会長)は13日、龍柱の現場見学会と勉強会を行った。その際、龍柱の実態を初めて知ったという女性は「(建設反対文書に)署名したい」と申し出て、それまで100人以上の署名をもらってこの日に持参したという。
一方、政府は2015年度の沖縄振興予算を概算要求の3794億円から「3000億円台」に大幅減額する方針を固めた。このため、来年度予算が本年度の3460億円を下回る可能性が出てきた。しかも、振興費の使途について菅義偉官房長官は26日の記者会見で「振興費が具体的にどう使われているのかチェックした上で、査定する」と語り、正当性のない振興費の削減に含みを持たせた。
自民党県連幹部によると「一括交付金を使った龍柱建設が真っ先にメスを入れられ、交付金返還の可能性もある」と指摘。辺野古移設反対を掲げて当選した翁長雄志(おながたけし)知事が那覇市長時代に強引に推し進めたとみられる龍柱建設問題は、来年以降の沖縄振興の大きな阻害要因になる可能性が出てきた。