衆院選沖縄小選挙区、自民は議席死守か革新が奪還か
「辺野古移設」争点で自民苦戦
共産主導の革新共闘に限界も
沖縄県知事選の熱い戦いが冷めやらぬうち、第47回衆院選が2日に公示され、戦いの火蓋を切った。序盤戦、全国的に自民党は優位に戦いを進めている中、知事選に続いて基地問題が争点になっている沖縄では苦戦を強いられている。全県4区のうち、共産党が主導する革新陣営が衆院選でも議席を奪還するか、前回自公体制で4議席を確保した自民が議席を死守できるか、日米安保体制の要である沖縄県の衆院選から目が離せない。(那覇支局=竹林春夫・豊田剛)
知事選では米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古沖移設に反対した翁長雄志氏が当選、10日新知事に就任した。翁長氏を応援した革新派は、共闘体制を維持し、1区は共産、2区は社民、3区は生活の候補者を擁立。4区は、翁長支持の無所属新人を擁立した。
前回衆院選では自民党候補4人は普天間飛行場の県外移設を公約に掲げ、4人全員(うち1人は比例復活)が当選を果たした。だが、昨年末、党本部の強い要請で辺野古容認に転じた。革新候補は全員、選挙チラシでは翁長氏と写真に写り、「党派を超えて、翁長県政を国政から支える」(共産・赤嶺候補)とし、革新候補がそれぞれ推薦人に名前を連ね、知事選での翁長票に期待をよせる。
「衆院選はアベノミクスと国の将来の在り方を問うもの。ところが、沖縄では地元マスコミの影響もあって、辺野古問題に焦点が向けられ、苦戦を強いられている」と自民党県連幹部は嘆く。
辺野古移設反対を掲げる翁長氏を支持した「建白書勢力」を背景にした革新候補が「辺野古に新基地を絶対につくらせない。公約違反した自民党議員に審判を与える選挙だ」と基地問題を争点に「自民党候補落とし」に躍起になっているのに対し、自民党候補は、「今回の選挙は、日本の経済成長、沖縄の経済振興にとって誰が国会議員にふさわしいか」とした上で、「日本の中の沖縄、自公与党政権の中で、経済、教育、福祉、離島など沖縄の抱える問題を現実にどう解決するのかが重要だ」と知事選と衆院選の違いを訴え、マイナスイメージを払しょくして巻き返しを図っている。
注目選挙区は、知事選敗北の責任を取って自民党県連会長を辞任した自民前職の西銘恒三郎氏(60)と保革を乗り越えた「オール沖縄」の象徴として元県議会議長で無所属新人仲里氏の一騎打ちだ。仲里氏が前回衆院選で西銘氏を後援会長として支えた人物だからだ。仲里氏は昨年、辺野古移設容認の立場で県連を引っ張った西銘氏を批判して後援会長を辞任。今年1月の名護市長選では革新候補を応援し、自民から除名された。
「『公約とは何か』が問われる選挙だ。安倍首相はわれわれが辺野古移設に反対しても粛々と進める態度だ。ウチナーンチュが(保革を超えて)一丸となり、オール沖縄でなければならない」
公示日の2日、仲里氏は│南風原《はえばる》町で行われた出陣式でこう演説した。翁長氏も出陣式に参加した。翁長氏は宮古島、石垣島なども訪れるなど、仲里氏に全力を注いでいる。
これに対し、西銘氏は、知事選敗北の影響から「大変厳しい選挙になる」と認識している。というのも、翁長氏が仲里氏と2人3脚の選挙戦を展開。「公約違反の審判を下そう」と自民党批判を繰り返しているからだ。
しかし、西銘氏は革新勢力の批判に動じない。「アベノミクスで地方経済を元気にしていく」と述べた上で、米軍基地がなく交付金が少ない沖縄本島南部及び離島地区への経済支援を約束。八重山諸島の尖閣諸島における安全保障環境の整備にも言及した。
「何一つ建設的な提案がない。完全に翁長知事に頼りきり」。仲里陣営の演説について、西銘選対は意に介さない。
革新候補者は、1区では共産の赤嶺、維新の下地、2区が社民の照屋、3区が生活の玉城、それに4区の公認政党なしの仲里。維新以外は、議員立法提出できる21議席に満たない政党だ。
これに対し、自民党候補は、国場、宮崎、比嘉、西銘のいずれも公明党の推薦で、自公与党の中央と一本化、これまで約2年間の議員生活で実績を積み重ねている。宮崎は7日、比嘉と西銘は8日、國場は9日に総決起大会を開き、終盤戦に向かう。
選挙序盤に各マスコミが世論調査で、「自民300議席迫る」「300超の可能性も」と自民優勢が報じると、革新陣営は、「憲法改正、集団的自衛権容認、秘密保護法で、戦争に向かわしめる安倍政権にノーを突き付けよう」と「沖縄から日本を変える」作戦を打ち出す。まさに、民主連合政権を目指す共産党の作戦そのものだ。10日には共産党の志位和夫委員長が来県、街頭で翁長氏とともに支持を訴える予定だ。
ただ、共産主導に対する警戒心から知事選で応援した保守中道系の那覇市議会及び連合沖縄は自主投票とした。翁長氏が言うところの「オール沖縄」体制はすでに崩れているのが実情だ。
「知事と那覇市長が革新で、国会議員まで全員革新になったら、沖縄はどうなるの。県民はわからないのかね」
60代の男性はため息をついた。「沖縄県はこれまで基地とともに生活してきた。基地がないのに越したことはないが、現実的には無理な話。基地縮小、返還という具体的な提案で、将来の沖縄を考えないとね」と続けた。
「本土では自民の風が強いかもしれないが、沖縄では知事選の風がまだ強い。自民にとってまだ逆風が吹いている。4区全員が無理かもしれないが、少なくとも4区と1区で議席を確保できれば」と自民党県連幹部は本土からの自民の風に期待する。
沖縄の小選挙区立候補者<1区> 赤 嶺 政 賢(66) 共産・前5 国 場 幸之助(41) 自民・前1 公明推薦 下 地 幹 郎(53) 維新・元4 <2区> 照 屋 寛 徳(69) 社民・前4 宮 崎 政 久(49) 自民・前1 公明推薦 <3区> 比 嘉 奈津美(56) 自民・前1 公明推薦 玉 城 デニー(55) 生活・前2 <4区> 仲 里 利 信(77) 無所属新 西 銘 恒三郎(60) 自民・前3 公明推薦
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