革新系議席減、保守系は増 沖縄県統一地方選

名護市、与野党の差1議席に

4市議選で保守系が過半数

 2014年沖縄県統一地方選挙は7日、5市6町13村の計24市町村議会議員選挙の投票が行われ、8日開票の竹富町を除く23市町村で即日開票された。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設の是非が焦点となった名護市議選では、移設反対の稲嶺進市長支持の革新系が過半数を確保したものの1議席減らしたほか、沖縄、宜野湾、石垣、南城の4市議選では仲井真弘多(ひろかず)知事を支持する保守系与党がいずれも過半数もしくは安定多数を維持した。県民が、革新系が焦点とした基地問題よりも豊かな沖縄の将来を掲げて知事選3選を目指す仲井真氏の実績と政策を評価した結果と言えよう。(那覇支局・竹林春夫、豊田 剛)

県民は基地問題よりも知事の実績と政策評価

革新系議席減、保守系は増/沖縄県統一地方選

保守系が過半数を維持した石垣市議会がある石垣市役所

 今回の統一地方選で全国的に注目を集めたのは、辺野古沿岸部で普天間飛行場の移設に向けた海底ボーリング調査が8月に始まって以降、初めて地元の民意を問う選挙となった名護市議選(定数27)だ。

 地元マスコミが連日のように辺野古移設に反対する報道をしたため、市民が直接関心のある経済振興、子育てや福祉、雇用などの生活に密着する政策論争がかすむ選挙戦となった。移設反対の稲嶺進同市長が革新系候補の応援の先頭に立ったほか、移設反対で知事選立候補予定の翁長雄志(おながたけし)那覇市長が名護市に入り、大々的に革新系候補の応援演説をした。

 一方、3選を目指す仲井真知事も名護市入りし、地元住民を回り、普天間飛行場の危険性除去のための現実的方策としての辺野古沖合の埋立承認に対する理解を求めるとともに、沖縄21世紀ビジョンを掲げて北部の振興の可能性を強調した。

 結果は、27議席のうち、辺野古移設反対の市長を支持する革新系与党が、地元マスコミや翁長市長の応援にもかかわらず1議席減らして14議席。野党は、公明が2議席確保、辺野古移設容認の保守系野党が1議席増やして11議席となり、与野党の差は1議席と接戦だった。

 何よりも、移設先の地元である辺野古区では普天間代替施設推進協議会前会長で移設容認の宮城安秀氏が2選を果たしたことの意義は大きい。辺野古区では代々、基地容認派の保守系候補が当選している。

 地元ジャーナリストは、「『地元の意見を尊重するのが民主主義である』と豪語して移設反対する稲嶺市長は地元の地元である辺野古区の推進派当選の意見を尊重するのが市長であるべきなのに、民主主義を全く軽視しているではないか」と稲嶺市長の移設反対の欺瞞(ぎまん)性を指摘した。

 与党革新陣営は「辺野古移設反対の世論が示された」と勝利宣言をしたが、1議席減らしたのが現実。これに対して野党保守系市議は「強烈な逆風だったにもかかわらず、前回より議席を減らしたのなら、市長派の退潮と見ることもできる」と保守派野党の「実質的勝利」と評価するとともに、「市議選はあくまでも市議選。基地移設の住民投票ではない」とし、市の権限では政府の移設計画を止めることはできないとの見解を示した。

 仲井真知事も記者団の前で「野党側が1議席伸ばしていて、判断の仕方は色々ある」と移設計画推進に何ら影響はないことを強調した。

 自民党県連幹部は、「2議席増やして、過半数を確保したかったが、1議席を奪還することができた。豊かな生活実現目指す仲井真知事の政策が市民の中に浸透してきたのではないか」と分析した。

革新系議席減、保守系は増/沖縄県統一地方選

主な市議選の結果

 一方、沖縄、宜野湾、南城、石垣の市議選ではすべて仲井真知事を支持する与党が過半数もしくは安定多数を維持した。

 中でも、普天間飛行場のある宜野湾市議選(定数26)では、定員が2人削減されたにもかかわらず、佐喜真淳市長を支える保守系候補15人(改選前と同数)が全員当選、野党が2議席減の8議席で中道3議席となった。

 野党、中道の現職3人が落選したことについて、地元の有力者は「革新候補は、伊波洋一元市長の甥(おい)である玉城健一郎氏がトップ当選したあおりを受けた。伊波氏が動き過ぎた感があり、今後、革新陣営にはしこりが残るのではないか」と分析した。

 また、嘉手納基地が所在する沖縄市議選(定数30)では、自公推薦を受けて今年4月に初当選した桑江朝千夫(さちお)市長を支持する与党保守系が16議席を獲得、野党は14議席だった。尖閣諸島を抱え、今後自衛隊誘致の賛否が問われるであろう石垣市(定数22)でも、今年3月に2選を果たした保守系の中山義隆市長を支持する与党が1議席増やして14議席となり、野党7議席、中道が1議席(1議席減)の結果となった。

 仲井真知事は記者団に対し、「名護だけが沖縄ではない。他の市町村(の結果)をご覧になれば、私の政策に賛成する方向が多いと思う」と述べ、仲井真支持が全県に拡大しつつあることを示唆した。

 「復帰後、大きな流れとして、革新が弱くなっている。今回の統一地方選は、投票者数と議席数を見ると、名護市も含め、民主主義を軽視する革新勢力の敗北と言わざるを得ない」。別の地元ジャーナリストは、沖縄県が大きな曲がり角に来ているとの見方を示した。