玉城知事の官製談合疑惑を自民会派が徹底追及
公正な県政運営に疑問
玉城デニー知事が10月に県発注の事業を受注した業者と会食していたことが発覚し、県議会野党の自民党が11月議会で追及した。さらに、12月6日と9日の一般質問でも、自民党議員12人すべてがこの問題を取り上げ徹底的に追及した。(沖縄支局・豊田 剛)
異常に高額な業務委託料、業者は参考人招致を拒否
「軽率な行動だった。今後、自ら襟を正して、県民の疑惑や不信を招くことのないように、客観的かつ公正な県政運営を確保するよう努めてまいりたい」
玉城知事は9月議会に続いて、今議会でもこう釈明した。
問題となっているのは、玉城知事が、有識者会議「万国津梁会議」の業務支援をしている共同事業体の受注業者らと契約前日の5月23日に会食したことだ。受注業者の名称は「万国津梁会議設置等支援業務スタートチーム」。山形県寒河江市の社団法人「子ども被災者支援基金」や旅行会社など四つの団体で構成され、同基金の鈴木理恵代表が代表理事を務めている。
この会議は、玉城知事の目玉政策の一つ。米軍基地の整理・縮小や児童虐待、持続可能な開発(SGDs)などをテーマに5月30日に初会合を行い、今年はこれまで6回の会議を県庁内で開催した。
会食に参加したメンバーは玉城知事や県職員を除けば、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の辺野古移設反対を主たる目的として活動するシンクタンク、新外交イニシアチブ(ND)のメンバーだ。
前回の議会では知事とメンバーの癒着ぶりが指摘されたが、今回大きな問題となったのは委託料の不透明さだった。今年度の業務委託料は2407万7千円と高額だ。これまで開催された会議は3分野の計6回だけ。県は6月と8月と9月の3回に分け、2166万円を受注者に支払ったことが分かっている。
有識者5人が出席する2時間から2時間半の会議1回分の予算は約350万円の計算になる。又吉清義県議(自民)は、「手当は統括責任者5万2700円、専門職員が3万7900円と2万6200円と、県民の理解できないほど高額だ」と疑問を述べた。
末松文信県議(自民)は「成果も確認せずに9割を公金から支払ったのか。あり得ないことだ」と詰め寄ると、県当局は契約書の「概算払い」の項目では「委託事業の進捗(しんちょく)度合いに応じて業務委託料の10分の9に相当する額」の支払いを規定しており、それに基づいて支払ったと説明。その上で、「今後は疑問を持たれないよう適正に支払う」と答弁した。
自民会派は当初、百条委員会の設置を求めたが賛成少数で否決されたことを受け、参考人招致を求めた。これに対し、チーム代表の鈴木氏と沖縄スタッフの徳森りま氏は、「出席できない」と文書で回答した。議会事務局によると、「身の危険がある」などと説明したという。
島袋大県議(自民)は「これがあなた(玉城知事)のいう客観的かつ公正な県政運営なのか。あなたのお友達ばかりではないか」と声を張り上げた。「今議会では疑惑は深まっただけ。手を緩めるつもりは一切なく、来年の2月議会で再び問いただす」と強調し、行政訴訟の可能性も示唆した。
官製談合疑惑の逃げ切りを図る玉城知事は、13日の記者会見で、今年1年の成果として、辺野古阻止のための取り組みを挙げ、具体的には全国主要都市で開催したトークキャラバンやフジロックフェスティバルへの参加に触れた。一方、知事肝いりのプロジェクトであるはずの万国津梁会議についての言及は避けた。
自民会派としては、この疑惑を県内世論に浸透させたい考え。ただ、地元メディアが県政批判に消極的で、知事を追い詰めるまでのうねりは起きていない。また、与党会派は「知事は県職員倫理規定に抵触しているわけではない」と静観する構えだ。
=メモ= 自民党が追及したポイント
・受注業者の一人は玉城知事誕生の中心的役割を果たした
・業務委託説明会に6社が参加したが、実際に応募したのは1社のみだった
・業務量に見合わない委託料を支払った
・出来高払いではなく概算払いは異例
・疑惑が浮上すると業者の現地スタッフが辞任した
・万国津梁委員の一人は「県庁職員は信用できない」と発言
・会食の参加者を確認せずに参加するのは不自然
・会食の支払いが明確でない