「自由民主」は五輪開催を支持
力強いG7のメッセージ、割れる国論に団結を強調
東京五輪・パラリンピック開幕まで1カ月余りになった。その前には東京都議会選挙(7月4日投開票)がある。衆院選の前哨戦でもあり、本来なら五輪で国論が割れるのは望ましい姿ではないが、新型コロナウイルス感染の中で東京五輪はすっかり与野党対決型の選挙争点にされている。
もっとも争点化したのは開催に反対する野党側だ。対する与党は変異株が発生するウイルスを相手に難しい舵(かじ)取りを迫られている。そのためか自民党の機関紙「自由民主」や公明党機関紙「公明新聞」では、見出しに「東京五輪」を取らない紙面が続いていた。
「自由民主」6月8日付では、9都道府県の緊急事態宣言を6月20日まで延長する5月28日の菅義偉首相記者会見を「迅速なワクチン接種へ体制整備」「感染防止ワクチン『成果出す大事な期間』」などの見出しで扱うなど、ワクチンによる感染対策を訴えた。
記事の中では、首相会見から「7月に開幕する東京五輪・パラリンピックについては『多くの方々から不安や懸念の声があることを承知している』として、来日人数制限と、大会に参加する選手、関係者の行動管理を徹底することを説明」したと触れている。
その後、高齢者から始まった一般対象の新型コロナウイルスワクチン接種が進み、自衛隊が運営する東京と大阪の大規模会場では17日から65歳以上だった対象を18歳以上に拡大。また、英国で開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)では、東京五輪の開催が支持され、国際五輪委員会(IOC)幹部らの来日も始まった。
G7サミットを受けて、ようやく同紙6月22日号は控え目ながらも見出しを立てて五輪開催記事を掲載。1面にG7サミットを取り上げ、「東京五輪・パラ開催に支持」の小見出しで、「来月に迫った東京五輪・パラリンピック。菅総理は各国首脳に対して、安全・安心な東京大会開催に向けた準備状況を説明。G7としてその開催を支持することで一致した」と、五輪開催に向け国際的支持を得た成果を強調した。
また、次期大会を2024年に予定するフランスとの首脳会談で、マクロン大統領から「『東京大会の開催を支持するとともに、開会式への出席を楽しみにしている』との発言があった」と触れている。
世界がコロナ禍に遭遇して初めての五輪となる東京五輪について、G7首脳宣言には「新型コロナに打ち勝つ世界の団結の象徴」と盛り込まれ、コロナ打倒の戦いの象徴と位置付けられた。力強いメッセージに違いない。
さらに、同紙2面で首相が国会で立憲民主党の枝野幸男代表と行った党首討論での発言から、「東京五輪・パラリンピック開催の意義 『団結して乗り越える姿を発信』」の見出しで扱い、「東京五輪・パラリンピックの開催については、徹底した感染対策を講じることを強調した上で、『共生社会を実現する一つの大きな契機。東日本大震災からの復興と、世界が新型コロナという大きな困難に立ち向かい、団結して乗り越える姿を日本から発信したい』と開催の意義を説明した」と報じている。
昨年は高校野球大会はじめさまざまなスポーツの試合が中止になったが、既にプロ野球、サッカー、ラグビーなどは観客制限などコロナ対策の下で行われている。コロナ禍の経験を積む中で試合開催に検討が加えられた結果だ。
同様に海外から選手団・関係者が来る五輪・パラリンピックでもコロナに打ち勝つ形を示せるか否かは、各党にとって衆院選の大きな試金石となる。
編集委員 窪田 伸雄