「大水害の時代」に備えておくべき常識をアドバイスした文春の好記事
◆後手に回る治水対策
過ぎ去ってみれば、日本列島は各所で「水」にやられていた。台風19号が残した爪痕は河川の氾濫(はんらん)、堤防の決壊、住宅地の浸水として、関東信越から東北にかけて生々しく残っている。
当初、巨大な暴風圏を伴い猛烈な雨を降らせると予報され、対策もされてきたのだろうが、結果として記録的大雨が各地を襲い“龍神の大暴れ”の直撃を食らってしまった。
暴風にも耐えた。大雨もやり過ごした。だが降った雨は流れてくるのだ。山を下り、支流から本流に集まり平野に至る。記録にもないような大雨が合わさったらどんな水量になるのか、少し想像力が足りなかったのかもしれない。
週刊文春(10月24日号)は「『日本沈没』に備える七つの掟」の記事を載せ、「日本はいま、大水害の時代を迎えている」と警告した。こう語るのは「リバーフロント研究所の土屋信行氏」だ。土屋氏は大雨の原因として地球温暖化、海水温の上昇、降雨量増加、豪雨の規模の大型化を挙げている。
世界はこのことを認識しており、土屋氏も「国連防災世界会議でも、事前防災の効果の高さが謳われています」と紹介した。ところがだ、同氏は「日本の政治家は、災害後の目に見える事後対策しか予算を付けない。だから水害を防げない」と批判する。まさに、今回の台風が教えた教訓である。
現在「一級河川の整備率が約七割」程度だという。これをもって民主党時代の「コンクリートから人へ」政策を批判しようとは思わない。彼らのわずか3年半の政府で“国土弱体化”が進んだわけではなく、長年にわたって取り組んでいる“国土強靭(きょうじん)化”が地球気候変動のスピードに追い付いていけないだけだ。「八ツ場ダム」や「多摩川堤防」の例を今さら批判しても当たらない。彼らの多くの失敗のほんの一例にしかすぎないのだから。
◆専門家が教える“掟”
さて、ならばどうしたらいいのか。同誌は「専門家に“掟”を聞いた」。台風が来る前に用意するもの三つ。第一にラジオ、しかも電池式のもの。「情報ライフラインとして断絶しにくい」からだ。携帯電話は基地局が停電したらアウト。二つ目が携帯トイレ。停電断水でトイレが止まるので必須アイテム。第三がライフジャケット。今回、寝たきりの老夫が目の前で力尽きて水没するのを見守った老妻がいた。痛ましく悲惨なことだ。「リュックに発泡スチロールを砕いてパンパンに詰めれば浮き輪代わり」になるし、「空のペットボトルを首の下に入れるだけでもいい」と土屋氏はアドバイスする。
台風が来たらどうするか。「早く逃げる」ことだ。単純だが、家を捨てて逃げるという決断ができないのが人だが、警報に従うしかない。今回は「移動中に命を落とした」人が多かった。だから早めに日中に移動しておく必要がある。しかも移動先として複数の候補地を確保しておく。
移動時の心得。長靴は雨が入り歩きにくく、むしろスニーカーがよい。水中に何があるか分からないので、杖(つえ)代わりの長い棒も。傘でなく合羽(かっぱ)。ハンズフリーにしておくべきだ。
なかなか有用なアドバイスである。「大水害の時代」の常識として備えておくべきことと肝に銘じたい。
◆韓国で鈍る反日不買
話題はガラリと変わって、「ホワイト国除外から3カ月」が経過した韓国の「反日不買の行方」についてサンデー毎日(10月27日号)が取り上げている。アサヒビールとユニクロが売り上げを大きく落としているが、最近になって韓国人もやせ我慢が続かなくなったのか、ユニクロは売り上げが上向きになってきたといい、不買の熱気もそろそろ冷めてきたようだ。
同誌の分析で興味深いのは文在寅大統領のコア支持層である「30代女性」の動向だ。「児童手当などの福祉政策から恩恵を受けている」グループ。購買力のある彼女らが反日不買を引っ張っている。だがここにきて曺国法相問題で支持が離れてきた。不買が鈍ってきた背景にこれを挙げている。ユニークな分析だ。
(岩崎 哲)