似たり寄ったり中途半端な建前論だった気候行動サミットの各紙論調

◆若者世代が危機訴え

 地球温暖化への対処について各国首脳らが議論するため、国連(米ニューヨーク)で23日に開かれた「気候行動サミット」は加盟国の行動表明などで温度差が浮き彫りとなった。主宰した国連のグテレス事務総長は閉会演説で、2015年に採択され16年に発効した温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」の目標達成のために「77カ国が2050年までに(二酸化炭素などの)温室効果ガス(温暖化ガス)の排出を実質ゼロとすることを約束した」と表明した。

 運用が20年からスタートするパリ協定は「世界の気温上昇を産業革命前に比べ2度未満、できれば1・5度以下に抑える目標を掲げる」(日経)。そのためには世界の温暖化ガス排出を50年ごろまでに実質ゼロとする必要があるからだ。

 サミットでは、このまま温暖化が進めば、その被害に直面することになる若者世代が危機感を募らせ、取り組みへの迅速な行動を求めた。たったひとりで気候変動対策を訴える「学校ストライキ」を始めたスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(16)は開会式の演説で「私たちは絶滅を前にしている。なのに、あなたがたはお金と、永続的経済成長という『おとぎ話』を語っている」と対策に動きの鈍い首脳らに迫った。大人たちは次世代にツケを回していると糾弾したのである。

 こうした若者の訴えを前に、多くの国がサミットで対策の強化を打ち出すなど一定の成果はあったが、一方で肝心の温暖化ガスの主要排出国である米国や中国、インド、日本などは77カ国に含まれていない。50年までに温暖化ガス排出をゼロにする目標の実現は見通せないなど大きな課題も残しているのである。

◆現役世代の責任言及

 気候行動サミットについて25日に論調を掲げたのは読売、日経、朝日、毎日の4紙。各紙に共通したのが、若い世代に対する現役世代の責任だと言及して社論の結びとしたことである。

 朝日が「若者たちの怒りを重く受け止めねばならない」「脱炭素社会への道のりは険しいが、負の遺産を残さぬよう、あらゆる手立てを尽くすのがいまの世代の責務」だと言えば、毎日は「破局を見ずに済む大人世代とは比べものにならないほどの危機感が、今の若者たちにはある」ことに言及。「健やかな地球を子孫に引き継ぐことに異を唱える人はいない。そのためにどのように行動するかが問われている。大人には、若者の申し立てに応える責任がある」と説く。

 日経は「次代を担う若者の危機感は理解できる。安心して成人し、生活できる環境を整えるのは現役世代の責務だろう」と、読売は「適切な政策を遂行し、より良い環境を次世代に引き継いでいく。各国の指導者は、その重い責務を果たさなければならない」とそれぞれ結ぶ。どれも似たり寄ったりの建前論に終始し、お茶を濁した。具体的で大胆に踏み込んだ提言もなければ、現下の温暖化ガスの二大排出国でありながら、その削減に積極的な取り組みが見られない米国と中国などの対応を厳しく批判し、対応を求める主張も見られない。わずかに、朝日がトランプ氏にパリ協定からの「離脱を思いとどまるべきだ」と言及し、読売が米中に対し「経済大国として無責任だ」と批判するだけである。これでは深刻さを増す地球温暖化を前に何も言っていないに等しいと言わなければならない。

◆産経の「主張」に期待

 日本については「電力供給を石炭火力発電に頼る現状」(毎日)、「国内外に数多くの石炭火力の新設計画があ」(朝日)ることが世界から批判されていることに言及しながら、それ以上の具体策には踏み込まない。では、どうすればいいのか。原子力発電を進めるか、風力や太陽光発電でいけるのか、突き詰めた理性的な議論を展開しなければならなくなるからであろう。その結果が中途半端な論調に終わったのではなかろうか。

 まだ社論が出ていない産経の「主張」に期待したい。

(堀本和博)