相続特集で同性カップルを取り上げるも「家族」の視点を欠くダイヤモンド
◆遺言作成を促す改正
8月の中旬は日本全土がお盆シーズンに入っていることから、経済2誌は終活とお墓、さらには相続の特集を組んだ。週刊東洋経済(8月10、17日合併号)で「相続の最新ルール すぐに始める終活 お墓とお寺の現実」と題した企画を組めば、週刊ダイヤモンド(同号)は、「家族を困らせない相続」と大きな見出しを付け、サブタイトルとして、「死後の準備 相続のキホン 失敗しない節税」を付けた。
確かに現在は超高齢社会が進み、医療費などの社会保障が問題になっているが、その一方で相続やお墓、空き家など家族の中では意外に大きな喧噪の対象になっているのである。
経済両誌ともこのお盆休みを利用して、「働き盛りのビジネスパーソンにとって、親と向き合える時間は実に少ない。だが、近い将来直面するのは、親に関する難題だ。親子でじっくり話す夏」(東洋経済)というように、実親が亡くなる前にしっかりと話し合っておくべきだと訴える。
折しも、今年7月には相続税法が約40年ぶりに大幅に改正施行された。改正のポイントについては両誌とも詳しく記されているが、その中で強いて言うならば、今回の改正点は「遺言作成を促す制度」だと東洋経済は指摘する。「それぞれ家族にあった相続を実現するためには、やはり遺言が不可欠であり、事実遺言の件数は増加傾向にある。今回の相続法改正では、遺言の書きやすい制度にするための改正もなされた」という。
◆財産目的の養子縁組
一方、ダイヤモンドは同性カップルの相続について取り上げた。長年、同性カップルとして暮らしていた二人だが、ある日、一人が交通事故で亡くなってしまう。遺書もなく、家と預金の財産は亡くなった男性の名義だったのだが、その男性の弟がやって来て、「この家と預金は私が相続することになった」と言い出してきたというのである。
わが国では、一部の自治体で同性パートナーシップ制度は導入されていても、同性婚は認められていない。従って、配偶者として互いの相続人にはなれないのである。同誌は、どちらかというと同性カップルに同情的だが、わが国の憲法に照らせば、同性婚は憲法第24条の「婚姻は、両性(男女)の合意のみに基づいて成立す」とする条文に違反するものであり、現状でパートナーが配偶者として相続することは不可能といっても決して間違ってはいないのだ。
ましてや、その記事の後半には、「結婚して配偶者になることができないことで生じる相続問題を回避するために、一部の同性カップルで行われてきたのが、養子縁組という方法である。この方法で法的に親子になれば相続人になることができる」としている。もちろん、ダイヤモンドもこれについては、「問題が残る」としているが、それは「ただ、財産を得る目的で行った養子縁組は無効だと主張されるリスクもある」と説明しているが、もはやここまでくると“メチャクチャ”と言わざるを得ない。
◆秩序を根底から破壊
カップルなのか、親子なのか。人間社会の基本的構成要素である「家族」の秩序を根底から崩しているとしか言えないのである。ダイヤモンドが取り上げた「同性カップルと相続」というテーマは、興味深いものではあるが、単に同情的な視点で相続について論じるのではなく、家族の本来的役割すなわち、相続を通して「命(財産)を子へつなぐ」という視点からの「相続」の説明が必要であった。
今回、経済2誌は相続以外にお墓、お寺についても取り上げたが、実際に宗派、教派によって葬儀の仕方が違う。われわれは、その違いをどれほど知っているだろうか。例えば、法名と戒名の違い、焼香の回数・仕方など最低限のマナーは心得ておく必要がある。
(湯朝 肇)