「徴用工問題」でスクープを放ち、お盆休み気分を吹っ飛ばした毎日
◆対立収拾めど立たず
「国際輸出規制体制の基本原則に反して制度を運用したり、不適切な運用事例が続けて発生したりする国とは緊密な協力が難しい」
あれっ! どこかで似たようなセリフを聞いたな、と思った人もおられよう。日本が輸出上の優遇措置を与えている「ホワイト国」指定から韓国を除外する政令改正を2日にも閣議決定した。その理由を軍事転用の恐れがある戦略物質の管理で「不適切な事案」があり、両国間の信頼関係も失われたからだ、としていたからだ。
冒頭は韓国の成允模・産業通商資源相が12日に、輸出管理上の優遇対象国から日本を除外する措置を発表した記者会見での発言である。韓国の措置発表を受けて世耕弘成経済産業相は「根拠不明」と反論した一方、国内産業界では別の調達先があることなどから直接的な影響は限定的として冷静な受け止めをしている。
それでも「徴用工問題」に端を発した日本と韓国の対立激化は、文在寅政権の「反日」暴走の対応もあって収拾のめどが立たない状況である。韓国をよく知る元駐韓大使の武藤正敏氏ですら「首脳同士が対話すべきだという人がいるが、今の韓国政府と対話しても何も進展はない。外交は相手を見ながらする必要があるため、こういう時は動かないで、次の政権で関係改善しようと考えざるを得ないのではないか」(小紙6日付「日韓打開/私はこう考える」)と冷徹な見方を示すのである。
◆米は「解決済み」支持
そんな中で毎日新聞(11日付)がお盆休み気分を吹っ飛ばす「徴用工問題」に関連するスクープを放った。第1面トップ記事「米『徴用工解決済み』支持」がそれで、米国は日本に複数回にわたり伝達しているというのだ。
「徴用工問題」について政府はこれまで、「日韓請求権協定で解決済み」とする立場を米国は理解しているとしてきた。しかし、米国は安全保障上の米日韓協力体制維持に配慮して、表向き日韓関係については中立の立場で、「早く改善を」と呼び掛けてきた。トランプ大統領も、踏み込んだ介入まではせず、対話を通じた問題解決を促してきた。
こうした中で毎日は「米国政府が日本政府に『元徴用工への損害賠償を含む請求権問題は、1965年の日韓請求権協定で解決済み』とする日本の法的立場を支持する意向を伝えている」と政府関係者が明らかにしたと報じたのである。
スクープ記事によると、すでに外務省は昨年10月に出た韓国最高裁判決を受けて、原告側が米国にある日本企業の資産差し押さえ申し立てに出ることを想定。米国務省に、米国で申し立てがあれば「『訴えは無効だ』とする意見書を米国の裁判所に出すよう求めた」。これに対し、昨年までに米国務省が「日本の主張を支持する考えを日本側に伝達」した。米国務省は「日韓請求権協定に『例外』を認めれば、基となる51年のサンフランシスコ講和条約で定めた『戦争請求権の放棄』が揺らぎかねないと懸念」したというのだ。
さらに記事は、日本の法的立場については7月の日米高官協議でも確認し、8月上旬にバンコクで河野太郎外相がポンペオ米国務長官と接触した際にも理解を得たことにも言及している。
◆後追い記事ない産経
お盆休みに入って、即座に対応できなかったのか。翌12日の新聞各紙は、毎日のスクープ記事に音無しの構え。後追い記事が出たのは新聞がお盆休刊(13日)したあと14日付読売(第2面)だけだった(14日現在)。これは新聞の怠慢極まれりと指弾すべきだろう。大問題化している日韓対立は、この間も盛んに報道されていたのに、だからだ。
特に、日韓問題については、記事の質が高く、情報量でも多くを提供してきた産経に記事が見当たらないのにはガッカリさせられた。お盆休みボケから早く脱して、従来の積極報道に立ち返り、信頼を取り戻してもらいたいと思う。
(堀本和博)