「2%成長」でも内需「不安」としつつ増税に触れなかった日経の真意

◆難しい機動的な対応

 2018年1~3月期の国内総生産(GDP)は実質で前期比0・5%増、年率では2・1%増と大方の予想を上回る良い数字だった。輸入が輸出以上に悪かったため外需が成長率に寄与したのである。輸入は内需の強弱をも反映するから、それだけ内需が弱かったということである。

 社説で掲載した各紙も、その点は一致して慎重かつ厳しい論調になった。各紙の見出しを挙げると、次の通りである。21日付読売「内需の弱さに警戒が必要だ」、産経「投資と消費に懸念拭えぬ」、日経「内需に不安を残した『2%』成長」、東京「体感景気は数字と違う」、22日付本紙「内需の弱さ改めて浮き彫りに」。24日の月例経済報告まで含めた毎日は25日付で「景気実態とズレがないか」―。

 GDP伸び率0・5%増のうち、寄与度は内需0・1%プラスに対し、外需は0・4%プラス。成長率への貢献で内需は小さく、外需のプラスも内需の弱さの反映だから、各紙が懸念するのも尤(もっと)もである。

 読売は、さらに「先行きも世界経済の動向が気がかりだ」と指摘。米中貿易摩擦が激しさを増し、中国経済が景気対策で今年広範に持ち直すとの見通しが立てにくくなったとして「日本企業の輸出が打撃を受けて、設備投資や消費をさらに冷やす恐れがある」と懸念を示した。

 それでも、10月の消費税増税については社会保障費を賄い財政再建を進める上で重要な安定財源として、「経済対策の準備に万全を期すべき」「機動的な政策運営が求められる」とした。ただ、財政面でも金融面でも政策対応の余地が乏しい現状で「機動的な」対応がどこまで可能か疑問が残ろう。

◆設備投資もマイナス

 「投資と消費に懸念が拭えぬ」とした産経は、秋の増税に万全の対応をするためにも、「足元の経済実態を冷静に見極めることが肝要である」とした。その際、産経は「注意したいのは、むやみに悲観論や楽観論へと傾斜することである」とした。米中摩擦次第で「日本の景気は大きく変わるはずである」というわけである。

 もっとも、同紙はその指摘の後で、日本経済には底堅さもあるとして、「消費が底割れするような状況ともいえない」としているから、悲観論傾斜への戒めが本意か。

 そうとするなら、それは日本経済への強い信頼からなのか、それとも日本の景気を左右する米中摩擦が6月下旬の大阪G20(20カ国・地域首脳会議)などで収束(米中合意)があるとみているからなのか、聞きたいところである。

 日経は「海外市場の変調を乗り越え、民間の国内需要が主導する景気回復の流れを持続できるか。日本経済は難局にさしかかっている」と極めて慎重である。

 個人消費では雇用者報酬(名目値)が前年同期比で1・1%増とほぼ4年ぶりの低い水準にとどまったことを懸念材料に挙げ、設備投資では中国関連で手控える動きが出るなどしてマイナスに転じた点を「最も気がかり」とした。

 日経に今回、増税についての言及がなかった。景気動向指数での「悪化」の基調判断、今回のGDPなどの経済指標、米中摩擦の深刻化、最近の政治情勢などから実施は困難になってきたとみてあえて言及しなかったのか気になるところである。

◆中途半端な毎日社説

 「体感景気は…」の東京は、「今回の数字が消費者の心理を的確に反映していない点」を批判し、「今、政府に必要なのは生活目線で景気の現状を認識することに尽きる」とした。ただGDP統計の性格上、仕方ない面もあり、「街角景気」などで補っているわけで、批判は的外れである。

 毎日の「景気実態と…」は確かにその通りであるが、「実態は、内外需とも不振で、景気のけん引役不在を印象付ける内容だった」とするなら、増税はどうするのかが次のテーマになるはずだが、それがなく半端に終わっている。

(床井明男)