祝意抜きで持論を展開し天皇陛下御即位を首相批判に政治利用する朝日

◆期待と展望を掲げる

 「令和の時代が動き出した。新天皇陛下が即位されたことを、心からお祝い申し上げる」(読売・2日付社説。以下、各紙同、朝日と日経は1日付)、「日本の国柄の最大の特徴は、天皇と国民が共に歩み、長い歴史を紡いできた点にある。天皇が代を重ねられることは、国民にとって大きな喜びである。ご即位をお祝い申し上げたい」(産経・主張)。

 この1日に、天皇陛下が即位され、即位に伴う改元で令和の御代(みよ)が始まった。新聞は元旦に、新年を祝う社論の中で、新しい1年の期待と展望を掲げる。今回の令和の幕開けでは、新しい御代への祝意、希望と期待、展望を掲げた。

 各紙の見出しは、冒頭の読売が「象徴の在り方の継承と模索と」、産経が「伝統踏まえ安定継承の確立を」。以下、小紙「両陛下と共に輝く日本創ろう」、日経「社会の多様性によりそう皇室に」、毎日「令和の象徴像に期待する」、朝日「等身大で探る明日の皇室」である。

 読売、産経の他に祝意に言及したのは小紙と毎日で、即位当日に掲載の日経は「列島は代替わりの祝賀ムードに包まれている」と間接的に触れ、朝日はこれを省略してもっぱら自社の世論調査を基にした朝日の皇室論考を展開した。

 各社が共通して取り上げたのは、「即位後朝見の儀」で天皇として初めて述べられたお言葉である。陛下は「上皇陛下のこれまでの歩みに深く思いを致し、常に国民を思い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としての責務を果たすことを誓います」と御決意を示された。これについて読売は「国民と苦楽を共にする決意が込められている」、産経は「立憲君主としての決意のお言葉」、毎日は「新陛下は平成の時代に作り上げられた象徴像を基本的に引き継ぐお気持ちを表明した」と受け止めたのである。

◆新たな皇室像を模索

 その上で、海外留学経験を持たれ、長年にわたり治水や水運など「水」問題を研究されてきた陛下と外交官出身の皇后陛下に「グローバル時代に皇室外交が果たす役割は大きい」「共に、国際親善で活躍されるだろう」(読売)、「象徴としての活動の幅を広げるものとなろう」(日経)などと新しい時代に応じた役割の幅が広がることへの期待を込めた。朝日も「皇室は国際親善にも大きな役割を果たしてきた。外国訪問や要人との面会はもちろん、外国人労働者の受け入れにかじを切り『多民社会』に移行しようとしているこの国の象徴として、内なる国際化にもご夫妻で向き合うことになるだろう」と展望。

 日経はさらに、今年2月の皇太子として最後の記者会見で陛下が、平成という時代を、情報技術の飛躍的発展で人々の生活様式が多様化したとされ、これを「寛容の精神で受け入れ、互いに高め合うことが大切」との認識を示され、令和を行かれる陛下の「『令和流』への歩みを見守りたい」(日経)と論じた。今後も新たな皇室像の模索は続くことになろう。皇后陛下の体調とともに、しばらくは「国民は温かく見守り続ける」(読売)ことが求められる令和なのである。

◆課題は皇位安定継承

 一方で、各紙が今、課題として指摘する問題は共通している。皇族数の減少と皇位の安定的継承についてだが、それらへの対応では主張は対立した。産経は皇位の継承では「大原則は男系による継承」を明確に主張。この原則が「万世一系の皇統を守ってきた」し、女系継承では「正統性や国民の尊崇の念が大きく傷つく」からである。また、皇族数の減少に対しては旧宮家の皇籍復帰で皇室の裾野を広げることの検討を主張。

 これに対して読売は女性宮家の検討を、毎日は「女性・女系天皇」を認めるかどうかの議論と女性宮家の創設の検討を求めた。日経はそのための新たな有識者会議を開き、議論を前に進めることを求めた。議論は結構だが、朝日がこの問題の議論を避けてきたとして、安倍首相批判の主張に政治利用しているのはいただけない。

(堀本和博)