新元号「令和」決定報道で2誌に欲しかった中韓の“由来”強調への反論


◆文春が「裏事情」詳述

 新元号が決まり、日本中が「令和」で沸き立っている。週刊誌もこの話題でどう誌面を作るかが腕の見せどころとなる。

 週刊新潮(4月11日号)は「『新元号』報じられない20の謎」をトップに持ってきた。「◯◯の謎」とは週刊誌がやりそうな安易な企画であるが、20件もあれば、中には注目すべき記事もあるはずと誌面を手繰ると…。

 冒頭が「誰もスクープ出来なかった『保秘作業』の裏事情」とある。新元号はマスコミがもっとも狙っていた特ダネだ。これをすっぱ抜けば“世紀のスクープ”として歴史に名を刻むはず。週刊誌に限らず新聞、テレビは新元号情報を抜くためしのぎを削った。

 結果は、官邸の保秘作業が徹底していたため、どの社も抜くことはできなかった。同誌は有識者懇談会のメンバーも官邸で携帯電話を預けさせられた、などのエピソードを紹介しているが、「これだけ厳しかった」という完敗の言い訳とも取れる。

 一方、週刊文春(4月11日号)はこの件をもっと詳しく報じている。「あっち(NHK)から漏れると思った。NHKは社会部(宮内庁)が強いから」とは発表後の記者懇談会で語った菅義偉官房長官の弁である。

 「特ダネの最右翼は安倍首相に最も近い岩田明子解説委員を擁するNHKと言われてきた」そうだが、岩田氏自身は「スクープ合戦に距離を置いていた」という。それはそうだろう。もし岩田氏が特ダネを取ったら、「首相との関係があるから」と揶揄(やゆ)されるに決まっている。それに首相が自身に“近い”記者に特ダネを与えたら、それこそ大問題だ。

 ともかく、新元号情報に強そうだったNHKも抜くことはできなかったわけで、新潮のあっさりとした記事に比べて、その辺の「裏事情」を書いた文春の方が読み応えがあった。

◆新潮の切り返し痛快

 新潮は「典拠」について幾つか触れている。これまでの元号はほとんど漢籍だったが、万葉集から取ったことで「中国が気を悪くした」という。

 中国メディアが「中国の痕跡を消すことは出来ない」としたり、万葉集自体が「中国の詩歌の形式などを参考にしている」と“中国由来”をしきりに強調しているのだという。意味のないことだ。新潮は「“パクリ大国”がどの口で言うのか」と切り返しているが痛快である。

 また、いずれの誌も触れていないが、なぜか韓国も“由来”を強調している。令和の考案者と目されている中西進大阪大学名誉教授が、「万葉集は半島系渡来人の影響を受けた」と述べたことから便乗参戦してきたのだ。

 しかし、中国も韓国も由来を誇ったところで、逆に貧しい文化的現状を吐露しているにすぎない。

 そもそも万葉集が天皇から防人(兵士)農民までと詠み人が幅広く、それが一緒に編纂(へんさん)されている稀有(けう)な詩集であるのに対し、中国や朝鮮でこのような詩集が残されているとは聞かない。詩歌、否、文字からして権力者、知識人の占有物だったから、庶民の歌が編纂されることなどなかったのだ。

◆今も生きている詩作

 さらに、同じ形式で現代人も詠み続けていることが大きな違いである。

 和歌から派生した俳句を含め、テレビで芸能人が習作を披露し、専門家の講評を受けたり、全国どこの公民館に行っても和歌の会、俳句の会があり、定例会を開いているなど、詩作は今も生きている。

 途絶えてしまった詩形が万葉集の遠い由来だと言われたところで何の感慨もない。

 両誌とも中国、韓国からのイチャモンについて、これぐらい言い返してもよかったのではないか。

(岩崎 哲)