白人至上主義者乱射事件を反トランプ大統領に仕立てる「サンモニ」

◆移民ら50人が犠牲に

 ニュージーランド(NZ)のクライストチャーチで起きたイスラム礼拝堂を襲った銃乱射事件は、28歳のオーストラリア人男性、ブレントン・タラント容疑者が反移民や白人至上主義の思想を持ち、イスラム教徒移民を「侵略者」とみて犯行に及んだ。50人が犠牲になる言語道断の惨事で、許されないテロであることは言うまでもない。

 容疑者の犯行声明に、トランプ米大統領を「白人の新たなシンボルだ」と書かれていたことから同大統領がやり玉に挙げられている。TBS「サンデーモーニング」も事件を厳しく批判し、問題を掘り下げていたが、NZのアーダーン首相の銃規制強化や容疑者の名を呼ばずテロリズムを批判するなどの姿勢を称賛しながら、落とし所は国を飛び越えトランプ大統領への批判に向かっていた。

 24日放送では、「風をよむ」でNZの事件から白人至上主義を扱った。「白人、とりわけキリスト教徒の白人が他の人種より優れ、支配的立場にあるという考え」を提唱した1850年代のフランスの作家ジョゼフ・ゴビノーに触れ、その影響がナチス・ドイツのユダヤ人迫害、米国の黒人差別思想となり、白人至上主義者団体クー・クラックス・クラン(KKK)が黒人に暴力を繰り返したと指摘。そこへ22日公開された映画「ブラック・クランズマン」から、KKK最高幹部が「アメリカ・ファースト」と団員に語り、乾杯するなどのシーンが出た。

 さらに、スパイク・リー監督の「問題は米国だけでなく、いま世界中で起こっている」との発言を受けてナレーションは、「近年急速に勢いを増していると言われる白人至上主義。一体なぜなのでしょうか」と問う。

◆米大統領に原因求む

 この「なぜ」に答える形でトランプ大統領の映像だ。15日の記者会見で白人至上主義が世界的な脅威として台頭しているかと問われたトランプ氏が、「特にそう思わない。深刻な問題を抱えているのは一部の人間だ。ニュージーランドで起こったこともそんなケースだ」と語る。

 番組は「今回も白人至上主義を擁護したとも取れる発言をしたのです」として、「そうした大統領の姿勢を反映してか」米国のヘイトクライムが約2割、白人至上主義団体数が約5割増加したという。擁護したのか反映なのか表現は憶測的だが、続く識者のコメントによってトランプ氏のツイッターなど差別的発言によって増加したとの説明だ。

 ちなみに、番組は触れていないが、同日の発言場面はホワイトハウスの大統領執務室で、メキシコ国境の壁建設予算のための非常事態宣言に対する議会の無効決議に拒否権を行使する署名の時のもの。犯罪犠牲者の遺族や警官らを招き入れていた。NZの事件が会見の本題ではない。

 しかし、テレビは映像の印象が強い。トランプ氏にナチス、KKKを加えて「白人至上主義を擁護したとも取れる」ように映像がつながって流れた。

 17日の放送では15日に発生した事件を詳報。容疑者が犯行の様子をインターネットで生中継した異常さや、逮捕された翌16日の裁判所で指を「ホワイト・パワー」のイニシャルの「W」と「P」の形にするサインを示した確信犯であること、犯行声明文で2011年に起きた白人至上主義の男によるノルウェーのテロ事件に影響を受けていたことなどを報道した。

◆2週連続で取り上げ

 ここまで視聴すると冷酷さに怒りが湧く。そこで番組は、前述の15日の記者会見で事件に関連し白人至上主義について尋ねられたトランプ大統領が、「深刻なのは一部の人間だけだ」と答えたことを問題にしていた。2週連続で取り上げたのである。

 凶悪犯に支持を表明された政治家はバツの悪いものだ。ただ、事件は単独犯であり「深刻な問題を抱えている一部の人間」とのトランプ大統領の指摘は的外れとは言えない。相模原の障害者施設での殺傷事件に近い極端な差別と偏見の持ち主であろう。

 24日放送では、ロシア疑惑捜査終了を扱いトランプ大統領弾劾の可能性を強調していたこともあり、一種の反トランプ・キャンペーンと見える。なお同大統領は17年8月、白人至上主義を批判している。

(窪田伸雄)