人口減少時代を迎えたわが国の地方活性化の処方箋を提示する東洋経済

◆自治体存続の危機に

 わが国の人口減少が止まらない。「少子高齢社会」が叫ばれて久しいが、2018年3月に国立社会保障・人口問題研究所が発表した報告書によれば、45年には全国で1億642万人、さらに65年には8800万人に落ち込むと予想している。これを生産年齢人口と老年人口(高齢者)の割合から見ると、65年には生産年齢人口が全体の51・4%、高齢者は38・1%となり、実に国民の4割近くが高齢者になるというのである。

 そうした人口減少問題に対して週刊東洋経済(2月23日号)は、生き残りを懸ける地方の取り組みを紹介している。「地方反撃 稼ぐ街は何が違うのか」をテーマにした特集ではまず、マクロ的に都道府県の人口増減の実態を取り上げた後で、現在、活気のある市町村を取り上げる。そして、結論として地方が活性化するための処方箋を提示するという構成になっている。

 そもそも、人口減少は何が悪いのか。それは無策であれば、「自(おの)ずと人が消える」ということであるが、経済的に見れば市場規模が縮小するということであり、需要が減るのは当然で、景気はデフレ圧力が強まっていく。また、デフレ基調になれば、企業は投資を控える。企業収益の減少は政府の税収減につながり、ましてや高齢者が増えれば社会保障費が膨らむ。政府の財政赤字が膨らみ行政サービスは次第に劣化していく。地方においてもそれは同様。自治体存続の危惧が指摘される中、それが現実味を帯びてくる。そうした事態にならないように今から手を打たなければならないというのが東洋経済の結論だ。

◆枠超え稼げる事業を

 そこで同誌は、昨年の国立社会保障・人口問題研究所の報告書を用いて、都道府県ごとの人口増減予測の推移をグラフにしている。それによれば、15年から30年まで人口が増加を示すのは東京都のみで、残りの46道府県は総じて減少傾向を見せる。そうした人口減を前提にして、今後自治体が生き残るための方策として、四つの処方箋を挙げた。すなわち、①自治体の枠にとらわれない事業をつくれ②補助金に頼らない独自政策を実行せよ③パラレルキャリアを育成せよ④住民1人当たりの所得を拡大せよ―というのである。

 ここで同誌がまず、取り上げたのが福岡市だ。1980年まで九州の大都市といえば熊本、長崎、北九州市だった。それが今では福岡市が九州最大の150万都市となった背景には、民間を巻き込んだ街づくり(今でいうコンパクトシティー実現)のための議論を70年代前半から始め、具体的に福岡市にとって何が必要なのかを行政に提案し、それを行政がバックアップしていったことが大きいという。

 他方、「稼ぐ街」としては、宮崎発の「九州パンケーキ」、豪雪を売りにする上信越3県を紹介。前者は九州各地から材料を調達、「九州パンケーキ」としてブランド化し、台湾やシンガポールなどにも販売事業を拡大している。後者は新潟、群馬、長野の上信越3県の7市町村が雪国観光圏として連携し、観光客誘致に成功している。すなわち、自治体の枠にとらわれない事業で生き残りを図れというのである。

 さらにもう一つの例が、北海道の猿払村である。同村の産業はホタテを中心とした漁業だが、1人当たりの所得が2017年で813万円。東京港区、千代田区に次ぐ高さを誇っている。ニシン漁が不振に陥った1955年、そこから一大奮起して「育てる漁業」への転換を目指し、ホタテの養殖に踏み切った。それが成功したわけだが、所得が増えれば、村の税収も増える。行政サービスの充実で他の自治体に比べて人口減少のスピードは遅いという。稼げる事業を展開して街を活性化させた例である。

◆近くにある成功の種

 もちろん、どの自治体も生き残りを懸け、また活性化を目指して取り組んでいるわけで、決して手を抜いているわけではない。ただ、現在のところ、成功している事例が少ないが故に、成功している自治体のみが際立つのだ。もっとも成功しているところが初めから成功しているわけではなく、最初はハンデを背負い、右往左往しながら成功を収めているところを見れば、決して道がないわけではない。ましてや人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)の時代に入ろうとしている昨今、成功の種は近くにあると確信するのである。

(湯朝 肇)