天皇陛下御在位30年で祝意と感謝伝えた産経、象徴の在り方問う日経、毎日
◆国民に感謝のお言葉
ともどもに平(たひ)らけき代(よ)を築かむと諸人(もろひと)のことば国のうちに充(み)つ
この1月7日に即位30周年を迎えられた天皇陛下の御在位30年を祝う政府主催の記念式典が2月24日に、天皇、皇后両陛下が出席されて行われた。4月30日に譲位される陛下は、お言葉で「天皇としてのこれまでの務めを、人々の助けを得て行うことができたことは幸せなことでした」とこの30年間を振り返られた。また、果たすべき務めを果たしてこられたのは「長い年月に、日本人がつくり上げてきた、この国の持つ民度のお陰でした」と相次いだ災害などの不幸にも耐え抜いてきた国民と支援の手を差し伸べてくれた国や国際機関に感謝の気持ちを述べられた。
冒頭は陛下がお言葉で、平成が始まって間もない頃の「感慨のこもった一首」と紹介された皇后陛下の御歌である。昭和天皇の崩御とともに始まった平成を「深い悲しみに沈む諒闇(りょうあん)の中を歩み始めました。そのような時でしたから、この歌にある『言葉』は、決して声高に語られたものではありませんでした」と全国から寄せられた言葉に国民と共にあることを心にとどめ「我が国と世界の人々の安寧と幸せを祈ります」と思いを語られたのである。
◆平和と繁栄祈られる
天皇陛下の御在位30年などに寄せて論調を掲げたのは、読売など朝日を除く4紙と小紙である。
陛下の御在位30年間と平成について、各紙はさまざまな感慨を込めて感謝を表した。
中でも最も厚い祝意を表したのは産経(25日付主張)である。「国と国民の安寧と幸せを祈る天皇の務めを、全身全霊で果たされてきた陛下に感謝を申し上げたい」と書き出し、両陛下が先の大戦で内外の激戦地となった沖縄、サイパン、パラオなど戦没者の慰霊の旅をされたことや災害の被災地を励まされたことに言及。「多くの人々の犠牲の上に今日の日本が築かれたとの、強い思いを持たれている」「この目に焼き付けられているのは、陛下が皇后さまとともに鎮魂の祈りをささげ、国民を気遣い、見回られる姿である」と陛下と平成について回顧したのだ。
小紙(24日付社説)も「御在位を祝うとともに、平和と国の繁栄、国民の幸福を祈られながら、象徴としてのお務めを果たしてこられた陛下に感謝を捧(ささ)げたい」と祝意を表した。その上で、平成の30年の出来事の中で「日本が先進国としての経済力、文化力、生活水準を維持し得た背景に、平和と国民の幸を願われる陛下のお祈りがあったことを忘れてはならない」と結んだ。
読売(25日付社説)は、陛下が語られた「近現代において初めて戦争を経験せぬ時代」となった平成について「平和の尊さを陛下とともにかみしめたい」と共感。被災地などを訪ねては祈られる「陛下は象徴天皇としての姿を体現されてきた。現在の皇室が国民の多くに支持されているのは、そんな姿があればこそだろう」「30年にわたる天皇としての道のりを思い、国民は改めて敬愛の念を深めたことだろう」と、今後の御代について見通すことに論考の力点を置いた。
◆国民側にも自覚促す
一方、日経(23日付社説)は5月1日に即位を控えられる皇太子殿下の59歳の誕生日に当たっての記者会見を柱に論じた。殿下が両陛下の歩みを「今後の公務の道しるべになると語られた」ことから「国民と心をともにし、苦楽をともにする皇室をめざすご意思と受け止めたい」と指摘。さらに殿下が情報技術などの発展などで「多様性を寛容の精神で受け入れることが大切だとも述べられている」ことに言及。「時代とともに移り変わる諸課題を前に、象徴やその務めはどうあるべきなのか。私たち国民も考えを深める必要があるだろう」と、国民の側にも自覚を促したのである。
毎日(25日付社説)も、陛下が象徴天皇の在り方を模索されてきたことを強調し「あるべき象徴像は時代状況によって変わる。次の時代にふさわしい象徴像を、新天皇とともに築くのは、主権者の国民」だと強調したのである。
(堀本和博)





