アフガンの米軍縮小は内戦を招来すると警告する英紙ガーディアン

◆テロとの戦いは失敗

 アフガニスタン情勢をめぐる動きがこのところ慌ただしい。1990年代に一時「政権」を樹立した反政府勢力タリバンが勢力を拡大する一方で、米国がタリバンとの交渉に乗り出した。トランプ米大統領が、アフガン駐留米軍の縮小を主張しており、米軍撤収後のアフガンをにらみ、ロシアも和平交渉に意欲的だ。

 イスラム根本主義組織タリバンやテロ組織の復活を懸念し、米軍縮小には米国内外で反対の声が強い。英紙ガーディアンは「米国はアフガンを破壊した。何もせずに立ち去ることはできない」と主張、拙速な撤収は内戦を招来すると警告している。

 アフガンでは、2001年の同時多発テロ後、米軍主導の連合軍による「テロとの戦い」が進められてきた。だが、18年がたつ今も情勢は安定していない。民間人3万8000人以上が死亡し、数百万人が負傷したり、難民化したりしている。

 ブッシュ政権以降、米政権が進めてきたアフガンでのテロとの戦いは失敗したと言っていいだろう。

 ガーディアン紙のコラムニスト、ティム・ティスドール氏は「歴代米政権、英国などNATO(北大西洋条約機構)各国は、アフガンが国家建設のモデルになると考えてきたが、それがネオリベラルの幻想だったことが明らかになった」とテロ掃討作戦の失敗を指摘した。

 また、アフガンの自立を目指し連合軍が進めてきた、アフガン軍・治安部隊の訓練も効果を挙げておらず、ティスドール氏は「もう一つの幻想」も成果を挙げていないと訴えた。

 同氏によると、近年のアフガン治安部隊の死者数は急増しており、昨年秋、アフガン人兵士・警官が1日30人から40人殺害され、2014年以降のアフガン人兵士の死者は4万5000人に達したという。ティスドール氏は「これらの死者数の増加は、2011年にピークに達した、欧米諸国軍の兵士の減少と一致する」と、外国軍の関与の縮小が治安悪化に直結している現状を指摘した。

◆政府の影響力も低下

 一方で、ガニ大統領率いる中央政府の影響力の低下も懸念材料だ。現在、中央政府が影響力を及ぼすことができる地域は国土の55%程度という指摘もあり、そのほかの地域は、タリバンやイスラム過激派勢力の影響下にある。

 カタールで1月下旬に行われた米国との和平交渉でも、2月5、6の両日、ロシアで行われた和平交渉にもガニ政権の姿は見られない。参加したのはタリバンとカルザイ前大統領であり、現政権は蚊帳の外だ。

 タリバンは交渉で米軍の撤収を一貫して求める一方で、中央政府を「米国の傀儡(かいらい)」と主張し、和平交渉への参加を拒否している。ティスドール氏はこれについて「不吉な前兆」と指摘、米軍撤収後の治安の悪化、内戦突入への危険性が高いことを指摘した。

 ティスドール氏は米軍の駐留軍半減計画について、「視野が狭い」とする一方で、「米国民は撤収を望んでいる。巨額の資金が投入されながら、いまだに終わりが見えない」と米国の主張にも一定の理解を示した。

 同時テロ以降、米国内での外国人テロリストによる攻撃はなく、ブッシュ政権による「国外でテロと戦うことで、国内でのテロとの戦いは避けられる」という主張が説得力を失っていることも確かだ。

◆友好国の支援不可欠

 ティスドール氏は、「米国の指導者は、(イランの脅威ばかりを強調する前に)アフガンでの戦いを、責任のある、持続可能な、人道的な方法で終わらせるためにもっと努力すべきだ」と主張するものの、その主張も内向き指向を強めるトランプ政権には届きそうもない。トランプ大統領は、シリア内戦の終結を前に、シリア再建費用を負担しないことを明言している。

 サウジ人政治家で14年の大統領選にも出馬したナディール・ナイム氏はカタールの衛星テレビ局アルジャジーラへの寄稿で、「アフガン人自身が、和平に責任を持ち、交渉をリードすべきであることは確かだ」とした上で、「そのためには、近隣諸国、友好国の支援と善意が必要だ」と訴えた。しかし、過激派組織とタリバンの台頭を前に、平和への願いも風前のともしびだ。

(本田隆文)