沖縄県知事の辺野古埋立承認に虚偽の“総意”で反対する沖縄地元紙

◆地元は続々移設容認

 沖縄県の仲井真弘多(ひろかず)知事が政府による辺野古沿岸部(名護市)の埋め立て申請を承認した。これで懸案だった米軍普天間飛行場(宜野湾市)の辺野古移設が大きく前進することになった。

 同飛行場は市街地にあることから騒音や墜落事故の危険性が指摘され、1996年に日米間で移設を決めた。それから17年、紆余(うよ)曲折を経て今回の承認にたどり着いた。だが、地元紙の琉球新報(以下、新報)と沖縄タイムス(同、タイムス)は知事承認の足を引っ張ろうと、異様な反対キャンペーンを張っている。

 安倍晋三首相と仲井真知事の会談(25日)で、首相から沖縄振興予算や日米地位協定の見直し案など「驚くべき立派な内容」(知事)が提示され、承認が確実視されると、両紙の紙面は反対論でほぼ埋め尽くされた。

 新報26日付社会面は見開きで「不承認へ心一つ 諦めない拳固く」と、まるで反対派機関紙である。知事が記者会見し承認を表明すると、両紙はそろって号外を出し(27日付)、「県民反発」(タイムス)と書き、それ以降、反対論のオンパレードだ。

 不思議なことに、紙面には当事者である普天間飛行場を抱える宜野湾市民や、移転先となる辺野古住民の声がほとんど載らない。載っても扱いは極めて小さい。移設絶対反対というのが沖縄の「県民総意」と言わんばかりの報じ方である。

 冗談ではない。宜野湾市の佐喜真淳市長は「固定化を避けるためにあらゆる可能性を排除しない」と表明しており、同議会も県内移設断念を求めた決議案を否決し、固定化反対決議を採択した(17日)。つまり地元市長も議会も辺野古移設を容認しているのだ。

 また同市に隣接する浦添市の松本哲治市長も移設容認を表明したほか(10日)、金武町(きんちょう)の儀武剛町長も認めた(18日)。同町は北部地域の国頭(くにがみ)郡に属し、辺野古と同じ太平洋側に位置しており米海兵隊基地キャンプ・ハンセンもある「基地の町」だ。それが辺野古移設を認めている。

◆移設実現運動を無視

 何よりも名護市の北部振興推進協議会と地元の辺野古を含む久辺3区が一貫して移設を容認しており、3月には名護漁協が埋め立てに同意した。こうした地元の意向は重いはずである。だが、新報もタイムスも知事承認の報道に際してほとんど取り上げず、黙殺に近かった。

 そればかりではない。今年8月に辺野古移設の実現を目指す「沖縄県民の会」が発足し、移設推進の5万名署名をスタートさせた。そして11月に目標をはるかに上回る約7万3000名の署名を集め、県民大会を開催し、知事に署名を提出した。これもニュースのはずだが、無視した。

 これまで両紙はことあるごとに「オール沖縄」とか「県民総意」といった表現を使って辺野古移設に反対してきた。それがいかに虚偽であるか、それが明らかになるのを恐れて辺野古容認の世論を封殺した。それが異様な反対キャンペーンの実態だろう。

◆真実から遠い朝・毎

 こうした地元紙の偏向報道に流されているのか、あるいは知ったうえで同調しているのか、朝日と毎日も同様の報道姿勢である。例えば、朝日26日付は「手形乱発 移設へ道筋」「喜ぶ知事 信じぬ地元」と報じるが、その「地元」には宜野湾市民も辺野古住民も入っておらず、排除されている。

 社会面では「辺野古 アメに屈しないで 沖縄県庁 数百人が囲む」と反対派の左翼団体の活動だけを伝え、ここにも宜野湾や辺野古の人々は登場しない。朝日26日付社説「政権の『本気度』を問う」も同じだ。

 毎日26日付には「知事への失望 噴出 『最後の砦が』『裏切りだ』」とあり、その中で「評価する声も」との1段見出し記事がある。だが、これもわずか9行にすぎない。28日付社説は「県民は納得していない」とのタイトルを立てているが、むろんその県民は反対派だけを指している。

 かつて朝日と毎日は普天間飛行場を「世界一危険な基地」として住民に寄り添って解決することを求めた。それがなぜ今、地元住民に寄り添わないで、イデオロギーを振り回す反対派だけに肩入れするのか。新報とタイムスと同様、真実の報道から遠い。

(増 記代司)